喫煙者お断り

 〈…基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない〉-「喫煙の自由」について最高裁が判決でこう説いたのは半世紀近く前だ。元来、肩身の狭い人権には違いない▲推奨されるべき習慣ではない。最近は分煙ルールも厳しくなって、たばこの吸える場所を探すのもひと苦労、元号も改まったことだし…と何回目かの禁煙を決意した人も少なくないかもしれない。そんな中▲長崎大が本年度の教職員募集から「喫煙者は採用しない」との方針を打ち出した。喫煙と無縁の状態で学生を社会に送り出したいと学長。これも時代の要請だろうか。しかし▲たばこの煙をキャンパスから締め出すことと、喫煙者という「人」を排除することは、似ているようで大違いだ。敷地内に喫煙所を設けず、建物には灰皿を置かせない-それでは不十分だろうか▲これが私企業の話なら、経営者の裁量次第という結論になりそうだが、長崎大は国立大学。幸福追求権、私的領域の自由、大学の自治、法の下の平等…憲法の教科書にあった幾つかの単語が頭に浮かぶ。きょうは憲法記念日▲細かな法律論はともかく、「喫煙」はとうとう“多様性”の仲間に数えなくなったのか、とザラリとした違和感が消えない。煙が目にしみる。(智)

© 株式会社長崎新聞社