ロマンスカー落石接触、容疑者はイノシシ 線路脇に穴掘られ…

イノシシが穴を掘ったとみられる線路脇の斜面(箱根登山鉄道提供)

 国内有数の観光地・箱根で4月に特急ロマンスカーが線路間にあった大型の石と接触、約1時間半にわたって立ち往生した事故。何者かによる悪質な置き石かと思いきや、意外な“容疑者”が浮上している。鉄道事業者は、線路脇にある崖の斜面にイノシシが穴を掘ったことで落石が起きたとほぼ断定。神奈川県箱根町内ではイノシシの出没数が増えており、関係者は落石対策の強化を迫られている。

 箱根登山鉄道(小田原市)によると、4月15日午後6時40分ごろ、箱根登山電車の箱根湯本-入生田間で、箱根湯本発新宿行き特急ロマンスカーの運転士が線路間にある約45センチ四方、厚さ約25センチの石を発見。ブレーキをかけたが間に合わず、石が車両の下に入り込んだ。けが人はなかったが、同電車は約1時間半にわたり乗客を乗せたまま停車。小田原-箱根湯本間で運転を一時見合わせ、上下線計17本が運休した。

 線路の片側は高い崖になっており、同社が現場周辺を翌日調べると、線路から40メートルほど上の斜面で、地面が掘り起こされた跡や、周辺にかじられた山芋が見つかった。同社担当者は「九分九厘、イノシシによる落石」とほぼ断定した。

 同社によると、線路周辺に小さな石が落ちていることは珍しくない。雨などの浸食で生じた浮き石が線路まで転がってくることもあるが、イノシシが地中のミミズや山芋を食べるために斜面を掘った際に一緒に石が掘り起こされて落石が起きているという。

 過去には電車がイノシシやシカと衝突して数分止まることがあったものの、イノシシによる落石で今回のように運転が長時間ストップするケースは近年なかったという。2012年6月には、台風に伴う豪雨で線路間に落ちてきた直径約70センチの石に普通電車が乗り上げ脱線する事故があった。担当者は「今回は石が平べったく、(当時の石より)小さかったのが不幸中の幸い」と胸をなで下ろす。

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