「5歳のSOS衝撃的」 児童虐待防止へパパ動く 横浜

児童虐待の防止に向け、勉強会を開いて知識を学ぶ「横浜ダディ」のメンバーら=横浜市港南区

 神奈川県内でも相次ぐ児童虐待の防止へ、横浜市内で育児に奮闘する父親たちが立ち上がった。女児が重度のやけどを負った状態で自宅に放置された3月の鶴見区の事件を受け、一念発起。今後勉強会を重ねて具体的な取り組みを進めていくつもりで、「先輩パパとして、育児に悩む父親たちをサポートしていきたい」と意気込む。

 活動に乗り出したのは、主に横浜市在住の父親でつくるサークル「横浜ダディ」。父親の育児参加を目的に市の支援を受けて2012年に発足した団体で、現在は20~70代の約70人がメンバーに名を連ねる。

 結成以降、キャンプやバーベキューなど家族や父子で楽しめるイベントを開催。市内の子育て拠点の運営にボランティアとして携わるほか、育児に悩む親の相談にも乗ってきた。これまでの活動で、虐待防止は必ずしも主要テーマではなかったという。

 メンバーが心を痛めたのが、3月に発生した鶴見区の事件だった。母親(22)と交際相手の男(21)が、全身にやけどを負った長女(3)を約9時間にわたり自宅アパートに放置。長女の兄(5)が近隣に助けを求めたことで発覚し、母親と男はその後、保護責任者遺棄の罪で起訴された。

 「わずか5歳の子が必死でSOSを発する姿が衝撃的だった。同時にこうなる前に、大人にも何かできたことがあったのではないかと考えさせられた」

 虐待防止へ決意を新たにしたメンバーらは17日、手始めとして、勉強会を横浜市港南区で企画。全国で虐待防止の啓発活動を行うNPO法人「児童虐待防止全国ネットワーク」の高祖常子理事を講師に招き、虐待が起きてしまうメカニズムなどを学んだ。代表の北田禅さん(41)は「専門的な知識を身に付けることで支援の幅を広げ、より効果的な取り組みとしていきたい」と語る。

 講演後には、参加メンバー12人が活動の方向性を協議。子育てに悩む世帯を孤立させないため、当事者目線で無理のない支援に当たることの大切さについて意識の共有を図った一方、家庭への介入の難しさなど課題に関しても意見交換した。今後に向けては、勉強会を継続して具体的な活動を模索していくことを決め、子ども虐待の防止を訴えるオレンジリボン活動の周知に取り組む方針も確認された。

 高祖さんは「父親の虐待を防ぐためにも、同じ父親目線での助言と支援は重要だ。皆さんの活動には大きな意味がある」と期待。4児の父親の池田浩久さん(42)は「子育てでは、いらいらしてしまうときが誰にでもあるもの。先輩パパとしての経験を生かし、声掛けやお手伝いといった支援をしていきたい」と力を込めた。

◆鶴見区の重傷女児放置事件 3月4日夕、全身にやけどを負った女児が自宅に放置されているのを鶴見署員が発見。女児は腰部分にラップをまかれ、紙おむつをはいた状態だった。女児の兄が1人で自宅近くの会社事務所を訪ね、「ママがいない」などと話したことが発覚のきっかけになった。同居する交際相手の男(21)とともに、保護責任者遺棄の罪で起訴された母親(22)は「一緒にお風呂に入った時に誤って熱湯のシャワーをかけてしまった」と供述した。

© 株式会社神奈川新聞社