今月の視点 自分の目と足で確認しないと正確な情報は把握できない 先月の終わり近くまで、朝晩はまだ快適な気候であった。しかし日中は少しづつだが、暑さが増してきたような気がする。

先月の終わり近くまで、朝晩はまだ快適な気候であった。しかし日中は少しづつだが、暑さが増してきたような気がする。

今月の視点 自分の目と足で確認しないと正確な情報は把握できない

待望の国境越えを初体験 バンコクからダウエーまで

先月の終わり近くまで、朝晩はまだ快適な気候であった。しかし日中は少しづつだが、暑さが増してきたような気がする。ミャンマーに長く滞在していると、温度計を見なくとも、体感温度がそうシグナルを送ってくる。
来月は「水かけ祭り」の大イベントが控えているが、暑さも半端ではなくなる。ついこの間新年を迎えたと思ったら、早いものでもう4月だ。日本ならばお花見の季節到来であるが、こちらは酷暑の中で奮闘を余儀なくされる。
ところで先月前半に、待望の国境越えを体験してきた(詳細はP 20 21 特集を)。バンコクからカンチャナプリを経由してミャンマー側に越境し、そこからタニンダリーのダウエーまで約340㌔を車で走破した。
ミャンマーで仕事をするようになってから、この国境越えはいつも頭の片隅にあった。地図を眺めていると、ヤンゴンからダウエーまでは相当な距離に思えるが、バンコクからだと計測するとその半分以下だとわかる。しかし、実際、果たして道路状況はどうなっているのか、国境のイミグレは面倒ではないのかなどと、心配ばかりが先に立って、つい憶くうになって空を飛んでしまう。
緬泰間にはいくつか国境があり、ほかの越境者から時々情報を入手したりはするが、日々ルールや法規制が変わるお国柄である。記事にするならばここはひとつ自分の目で確かめなくてはいけないと思い、ついに決行した。

残す60㌔の舗装が終われば回廊が完成 緬側国境の町にカジノホテルが出現した

バンコクからヤンゴンに向かう機中から見ると、離陸してから30分くらいすると景色が一変し、眼下にうっそうとした広大な山林が広がってくる。これでミャンマー領空に入ったことを確認できるが、陸路の場合もバンコク~カンチャナプリ間およびその先60㌔西の国境ゲートまでは快適な舗装道路が続いていたが、ミャンマー側のティキの町に入ると景観は大きく変わる。
まず曲がりくねった未舗装の道路を約60㌔近く走らねばならない。未舗装といっても大型トラックの輸送ルートにもなっているから、道路は轍(わだち)や穴がたくさんあり、約3時間ほどは時速30㌔ほどしか出せず、ダウエーの手前40㌔のミタという町までは、始終大きな揺れがを覚悟しなければならない。
現在、このルートは南部経済回廊上にあるが、この悪路の60㌔が舗装されれば、ベトナムのホーチミンからプノンペン、バンコク、ダウエーまでの回廊は完成する。
その重要なルート上の60㌔をどうするのかと思っていたら、カンチャナプリでお会いした商工会議所会頭が「工事はタイバーツ借款で今年8月からスタートし、2年以内に完成させる」と断言した。
さすがタイだな、と思っていたら、会頭はさらに驚くべきことを明かした。「ミャンマー側のティキの町に、11軒のカジノ付きのホテルができる。」というのだ。確かに行ってみるとすでに1軒のホテルが営業していて 山の傾斜地には総客室数750室の4つ星ホテルが建設中だった。オープンしているカジノホテルを覗くと、ルーレット、ブラックジャック、大小、バカラ、スロットなど、基本的ゲームはすべて揃っており、びっくりしたのは、平日の昼間だというのに、すべてのゲーム台はタイ人観光客で埋まり、大変な賑わいを見せていたことだ。
もし、南部経済回廊が完成し、現在のバンコク~ダウエー間の走行時間約7時間半が5時間半に短縮されれば物流が活発化し、人の往来も増える。それを見込んでのカジノホテルだろうが、こうした話はヤンゴンにいては全く伝わってこない。

開発が活発かする緬泰国境地帯 虎視眈々と機を伺うメコン諸国

こうした動きを見聞きしたりすると、やはり聞きかじりではだめだということを実感する。それにしてもミャンマー領内だというのに、タイ側の経済人たちが想像していた以上にこの隣接するタニンダリー管区の開発、発展に力を入れていることにも驚いた。
だから国境の両国のイミグレもスムーズになっているのか、ビザに問題がなければほんの数分で事務処理が終わる。それどころか、将来の状況を見越して、両国とも新しい出入国管理事務所を建設中で、タイ側には広大な敷地を整備して大型の貨物やバスを離発着させるターミナルも新設中だった。 一方、ダウエーのSEZは、現在SEZ内と道路の整備が最終段階にきているが、先月SEZの北側に建設予定のフランスのトタル社とドイツのシーメンス社との合弁による液化天然ガス発電プロジェクトがスタートした。すでに担当者が来て管区政府と詰めに入っている。
ヤンゴンにいるとどうしてもこうした地方の動きに鈍感になるが、ヤンゴンは、相変わらずホテルや大型商業施設、コンドミニアムの建設が絶えることはない。しかしこれ以上この街が一極集中状態になることが、果たしてミャンマーにとってプラスになるのかどうか、はなはだ疑問に思えてくる。
日本でも東京集中から地方創生が叫ばれてきて久しいが、うかうかしているとミャンマー南部は、タイを中心としたメコン諸国主導の経済圏になりかねない。何しろダウエーSEZはティラワの約10倍、東南アジア最大規模の特別工業団地なのだ。
そうした現状と危惧は、やはり自分の目で確認しないと正確なことがわからない。そのことを今回の国境越えで強く感じた次第だ。

© Yangon Press Asia Ltd.