【発売から20年】最新モデルも最高だ!変わり続ける定番『パタゴニア/R1』の魅力 1999年の秋に発売された『パタゴニア/R1』シリーズ。それまでミッドレイヤーの定番だった両面起毛のフリースの保温性はそのまま、ニット構造を採用することで、レイヤリングしやすく軽量コンパクト、しかも通気性を実現。2002年にはストレッチ性も装備し、ミッドレイヤーの新定番となりました。2019年最新モデルに至るまでの歴史を振り返りつつ、2010年モデルを現在でも愛用している筆者が、R1のよさを解説します。

20周年目のR1シリーズが、かなりいいんです!

パタゴニアが誇る定番ミッドイレイヤーに『R1』というシリーズがあります。独自に開発した片面起毛フリース素材『ポーラテック・パワー・グリッド』を使っており、起毛面は四角い凸凹状になっていて、適度な保温力がありながらヒートアップした際にはムレないように上手く通気して熱を逃がしてくれるんです。
表面はジャージ素材なので上にアウターを着用しても滑りがよく、着心地も◎。

そんなミッドイレイヤーの基本を抑えている『R1』。今シーズンからは汎用性が高く街着としても着られる『R1フルジップ・フーディ』(写真左)、薄手の素材を組み合わせたハイブリッド構造で、よりアクティブなシーンに対応する『R1プルオーバー・フーディ』(右上)、アンダーウエアとしても着られ、レイヤリングも可能、しかも軽量コンパクトに収納できる『R1プルオーバー』の3種類がラインナップ。いずれもR1史上最高の出来だと評判です!

そもそもミッドレイヤーってなに?

ところで、冒頭にサラッと書いた「ミッドレイヤー」。日本語だと中間着ですが、どんなウエアがご存じでしょうか? アウトドアや登山では、レイヤリングという重ね着をすることで、暑さ寒さを快適に乗り越える方法があります。

これらが主に求められる機能です。

※1999年秋に発売されたR1ジップ-T

ミッドイレイヤーは、寒いなと感じた時に羽織るフリースに代表される保温着。しかしその保温性が高すぎると、山を登っている最中に暑くなり汗を多くかいてしまいます。濡れたウエアを着続けた後にやってくるのは「冷え」です。そのため行動時に暑くなく、寒くなく、汗を多くかかない位のちょうどよい温かさを提供してくれるミッドレイヤー選びが重要になってきます。

この『ちょうどよい温かさのミッドレイヤー』を着るだけで、快適さは確実にアップし、安全な登山へと導いてくれるのです。

フリースの生みの親が

その機能を見直して生まれた『R1』

※1999年秋、R1発売時のパタゴニアのカタログ

ミッドレイヤーを代表するのがフリースと前述しましたが、そのフリースを現ポーラテック社とともに1981年に生み出したのがパタゴニアです。しかし1998年の冬、パタゴニアはフリースの収納時のかさばり、アンダーレイヤーに適さない分厚さ、両面起毛によるレイヤリング時の着心地の悪さを改良することを決断します。当時のフリースは、ソフトな着心地と保温性を上げる毛足の長さが災いして、シリアスなクライミングシーンでは、「最適」といえるものとはいえなかったのです。

※1999年秋に発売されたR1フラッシュプルオーバー

そこでパタゴニアの開発チームは、登場以来フリースに追加された機能を削ぎ落とし、よりシンプルなものへと進化させました。1999年秋に誕生したのが、ニット構造にヒントを得た『R1』。表面はジャージ素材で滑りがよく、裏面は凹凸のついたグリッド構造の片面起毛フリース素材というものでした。その素材を使用したウエアのひとつが、上の写真の『R1フラッシュプルオーバー』です。

(内側のグリッド構造フリース)

機能だけでなく環境への配慮も

ウエア選びの大切な基準

※2004年発売のR1ベスト

『R1』発売から20年。その過程で、伸縮素材の採用、より体にラインに沿ったパターン、フードの装備、ポケットの配置場所等、運動性とフィールドでの使い勝手をアップさせる改良が施されてきました。しかしその基本構造に変わりはないといいます。それは、最初の『R1』の完成度の高さの証明でもあります。

また、環境保護やフェアトレードに長く取り組んできているパタゴニアは、この『R1』においてもリサイクル・ポリエステルへの移行、フェアトレード・サーティファイドの縫製などを採用しています。地球というフィールドで遊ぶ私たちが知るべきこと、行動すべきことを、一歩先に踏み出して提案してくれているのです。
機能性だけでなく、どうやって作られたものなのかは、21世紀を生きる私たちのウエア選びの大切な指針です。『R1』を選ぶ時、使う時、私たちは地球環境という視点を持つことが出来るのです。

R1シリーズで、山でのおすすめは『R1フーディ』

※2002年秋冬のパタゴニアのカタログ

筆者は2010年から『R1フーディ』という、バラクラバのよう顔を覆うフードを装備したジャケットを愛用しています。
よく伸縮して動きを邪魔せず、適度な厚さ(薄さ)で暑くなりすぎず、寒さを感じたら袖先に備えられた親指を通すサムホールを活用してハーフフィンガーのグローブのように保温性をアップ。さらに冷えそうならフードを着用。前立てはハーフジップなのでバックパックのウエストベルトを締めてもゴワつかず、暑いなと感じたら深く設定された前立てを開ければ換気ができます。

『R1フーディ』は、『R1』の快適さをより幅広いシーン、シーズンで活用できるモデルなのです。実際、行動着としても保温着としても1年中装備しています。そして10年経っても現役。耐久性もお墨付きです。

絶えず繰り返され続けてきたアップデート

※2007年のR1フーディ

その『R1フーディ』は、2001年に『R1フーデッド・プルオーバー』として登場したモデルです。2003年に一旦は廃番となりますが、2006年により高い伸縮性を備えて再登場しました。

その後も数年おきに細かなアップデートが繰り返されてきました。当初あっためくり上がり防止の股のストラップは伸縮性が高まりフィット性がよくなったからか、間もなく排除されました。他にもバラクラバ状になるフードが、そこまでは不要だと感じたのかただのフードになったり、しかし要望が多かったのか復活。斜めに配されていた前立てはジッパーが顎に当たるのを防いでいたはずが、当て布をすれば解決することになったのかセンターになったり、タテに切られていた袖口のサムホールは、親指が出しやすいヨコ位置になったり・・・試行錯誤をくり返しながら、現在へと続いています。

※2013年のR1フーディ

今回、2007年、2013年、2016年モデルをパタゴニア日本支社からお借りしましたが、それぞれ本当に細かな変更が見て取れ、パタゴニアの開発陣とテスター、さらにユーザーが抱く『R1フーディ』そして『R1』シリーズへの力の入れよう、こだわりを強く感じました。

※2016年のR1フーディ

最新R1フーディもサイコーです!

2019年、最新のR1フーディ

2019年の『R1フーディ』は、商品名が『R1プルオーバー・フーディ』に変わりました。そしてポーラテック・パワー・グリッドと同社のアンダーウエアに使われるキャプリーン素材をハイブリッド採用しています。

身頃や袖は耐久性にすぐれたパワーグリッド、フードや脇身頃・裾部分は薄手のキャプリーン素材を用いることでフィット性を装備。シンプルな構造はそのまま、より軽量コンパクトになり、通気がよく着心地を向上させたモデルです。筆者が愛用する2010年モデルより確実に動きやすく、まさにオールシーズン活躍してくれるミッドイレイヤーになっています。

一生モノ、長く使えるといわれるアウトドアの道具にあって、20年続いているモデルは多くありません。それがシリアスなシーンでも使い続けられているテクニカル・ウェアとなれば、ほとんどありません。それが続く理由は、愛用者の多さはもちろん、フィールドで機能する基本コンセプトの確かさにあるのでしょう。その確かさを体感すべく、『R1』を是非試してみてください!

それでは皆さん、よい山旅を!

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