Off time Vol.32 成功者の横顔 会社または商店など、トップで 活躍する人のオフタイムはどんな顔を 持っているのでしょう。オフタイムから 垣間見るトップの顔をご紹介します。

■今月の人■

松尾バルブ工業株式会社 専務取締役

松尾 直樹 さん
1979年生まれ、彦根市出身。大学は経済学部に在籍しながら卒論で絶滅危惧種の淡水魚であるハリヨの研究をするほど環境への関心が高く、環境保全の仕事に就きたいという思いがあったが祖父の「時代がどんどん変化する中で経営判断をするには、若い力が必要」の一言で大学を卒業後、家業のバルブ製造業を継ぐ決意をする。家庭では7歳、5歳、1歳の3人の男の子の父。恐竜に夢中の長男と一緒に恐竜の絵を描くのが毎日の日課で、苦手な絵がだんだん上達して面白くなってきたという。【滋賀県中小企業家同友会会員】
スポーツを通して身につけた「基礎」と「反復練習」がものづくりにも活かせることを実証していきたい
リフティングは100回落とさずに出来ないと次のメニューには進まない、などマイルールを決めて黙々と練習している。野球、バドミントン、サッカーと子どもの頃からスポーツに親しみ、次はマラソンにチャレンジしようと、ただいまトレーニング中。
松尾バルブ工業では船舶用、下水道用、産業用のバルブを製造している。バルブ製造業は彦根の地場産業で水道用バルブでは全国シェアの7割が彦根で製造されている。しかし50社あった会社は20数社に減少。「衰退を食い止めるためにも、新しいものづくりにチャレンジしたいですね」。

 小学生のときは野球、中学でバドミントン、高校ではサッカーとスポーツに親しんできた松尾さん。スポーツ万能かと思いきや「もともと運動は得意なタイプではなかったんです」。そんな松尾さんが大切にしているのは「基礎」です。「今自分が出来ないことも、基礎の反復練習をすることで出来るようになると思ったんです」。強い人は同じ基礎練習を何度も反復していることに、中学生の時に入ったバドミントン部で気付きました。やがて、それを実践することになる人生の転機が訪れます。1994年のサッカーW杯のとき同級生から優勝チームを当てないかと誘われたことをきっかけに嫌いだったサッカーをTV観戦。そこで「『キャプテン翼』そのもの」というオーバーヘッドキックを見て「こんなプレーが出来るようになりたい!」と思い、バドミントン部の練習後に一人サッカーの練習を始めました。そして高校でサッカー部に入り持ち前の反復練習でレギュラーに。大学時代も彦根市のクラブでプレーを続け、社会人になってフットサルに転向。約10年前にチームを立ち上げプレーを楽しんでいます。練習は月に1、2回。メンバーと練習相手のチームに声をかけ、実戦で技術を磨いています。

フットサルをする前には40分かけて入念にストレッチを行なう。ストレッチの順番を決めたノートを見ながらしっかり準備するという。また講演会などで話を聞く時も必ずメモを取り、後でそれを見ながらパソコンで清書。打ち終わったらメモを消し、教えられたことをデータで残すようにしている。

 仕事で製造販売に携わるバルブは液体を流す、止める、流量を調整するための機械で水や空気、原油など生活に必要な物資を供給するのに欠かせないもの。もともと環境問題に関心のあった松尾さんは「バルブ製造を通して社会に貢献できると思っています」と環境とのつながりを意識して仕事に取り組んでいます。これまで営業一本でしたが、今年から旋盤加工・機械加工の勉強を始めました。「基礎と反復練習がものづくりの現場にも活かせることを実証したいんです」。若手社員を自社のバルブを搭載した船に乗せて社会とのつながりを感じてもらうなど、人材育成にも力を注ぐ松尾さん。基礎を大切にするその生き方は地道に、そして確実に彦根を変えていく力になりそうです。


松尾バルブ工業株式会社
彦根市外町245 TEL:0749-22-1564 FAX:0749-24-5846 http://www.matsuo-valve.com/

取材:2016年12月

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