アルファード人気に続け! 香港に続き中国本土でもヴェルファイアが販売開始される理由とは

トヨタ アルファード/ヴェルファイア【中国仕様】

アルファードは中国・香港で1500万円級の高級車だった!

トヨタ自動車は2010年から中国本土で高級ミニバンの「アルファード」の販売を行っているが、今年2019年の上海モーターショーにて、兄弟車である「ヴェルファイア」も中国での販売を開始すると発表した。

中国は近年、MPV(中国ではやや大きいサイズのミニバンを指す)の人気が上昇している。トヨタ アルファード・ヴェルファイアは中国で生産されず、日本からの輸入車ということもあり、現地での販売価格は日本円で1,300~1,500万円以上の超高級車だ。また中国よりも先に市場投入された香港でも、多くのVIPに熱烈な支持を受けている。

今回は、中国・香港におけるアルファード・ヴェルファイア(アルヴェル)人気の理由を探ってみた。

香港にはタクシーキャブ並みにアルヴェルが生息している!?

トヨタ アルファード/ヴェルファイア【中国仕様】

※香港仕様のヴェルファイアはエンブレムのトヨタマークが特徴

1997年にイギリスから返還されて、中華人民共和国特別行政府となった香港だが、返還後も左側通行・右ハンドルはそのまま。本来は輸出を想定していないタクシー用のトヨタ クラウンコンフォートといった右ハンドル専用モデルを含め、ここでは多くの日本車を見ることができる。

特に多いのは、香港で2004年から販売が始まったアルファード、2012年から始まったヴェルファイアだ。台数の推移は以下のようになっている。

香港で新車販売されたアルヴェルは、販売開始初期の頃に比べると2018年には4倍以上の台数が売れていることになる。累計台数は約17,800台だが、近年は日本からの中古車も多数流入しており、それらを合計すると約18,000台にも上る。なんとこの数字、香港のタクシー18,143台(※香港運輸省最新資料より)に匹敵する台数である。

中国の経済特区“深セン”のVIPたちもアルヴェルに乗って香港を訪れていた

また、香港の市街地で見かけるアルファードやヴェルファイアには、香港と中国本土の両方が走れるナンバーがついていることが多いが、これは香港から深センを経由して中国本土と行き来する車が多いためだ。深センといえば中国初の経済特区となった地域で、中国経済発展の礎となった町でもある。かの有名なファーウェイやテンセント、世界最大のEVメーカーBYDも深センから始まった。

当然、世界から多くVIPが訪れる場所であり、香港経由で深センに入って来るVIPの送迎に好まれるのが、アルヴェルのような高級ミニバンなのである。香港~深センは電車も走っているが、スリが非常に多く、治安も悪いためVIPの送迎は高級車で行われる。

香港でアルヴェル人気が異常なまでに高いのはこんな理由があったのだ。

意外! アルヴェルのキャラの違いは日本ほど意識されていない!?

トヨタ アルファード/ヴェルファイア【中国仕様】

アルファードとヴェルファイアは御存じの通り、双子車、姉妹車である。

2車の最も大きな違いはフロントグリルのデザインで、アルファードはキラキラ(ギラギラ!?)部分が広く、全体的に派手高級志向でターゲットとする年齢層も高め。対するヴェルファイアは、より若い層に向け、ちょい悪系のスポーティな車というキャラを与えられている。

中国本土では、2010年から導入されているアルファード、そして、このたび導入が発表されたヴェルファイアは、日本の様にキャラが分かれているのだろうか?

これに関してトヨタ中国の広報に聞いてみたが「日本と違って明確なキャラクターの違いはありません」との回答だった。

ヴェルファイアにトヨタマークが装着されるワケ

中国仕様のトヨタ ヴェルファイア【一汽トヨタwebサイトより】

※一汽トヨタwebサイトより

キャラ違いが日本ほどにはないことは、グリルのエンブレムにも表れている。日本仕様ではアルヴェルそれぞれにトヨタマークではない独特のエンブレムが掲げられているが、最新の中国仕様ヴェルファイアのフロントにはトヨタマークのエンブレムがおさまっている。中国のVIPにとってはトヨタマークの方が高人気なのである。

日本と中国では、アルヴェルの使われ方も大きく違っている。日本はファミリーユースが主体で、ビジネスユースが少々。中国ではほぼ100%がビジネスユースで、VIPの送迎に好んで使われる。パーソナルユースではないため、いかに豪華で快適で、ゴージャスな車であるかが中国では重要になってくるのだ。

倍増ペースで販売台数を増やすアルファードに続け!

トヨタ アルファード[中国仕様]
トヨタ アルファード[中国仕様]

以下は、2010年から中国本土での輸入販売が始まったアルファードの販売台数である。

年間3000万台近い新車が販売される中では小さな数字かもしれないが、近年のアルファード人気は、中国において超高級車であるにもかかわらず、販売台数の伸びが凄まじい。

なお、アルファードは広汽トヨタ販売を通じて行われ、ヴェルファイアは一汽トヨタ販売を通じて行われる。ともに中国自動車メーカーとトヨタ自動車の合弁会社になるが、広汽トヨタと一汽トヨタはそれぞれ別会社だ。違う会社で同じアルファードを販売するわけにもいかないので、一汽トヨタでは新たにヴェルファイアの輸入販売が行われることになったということ。アルファード人気が倍増ペースで年々高まる背景もあり、一汽トヨタとしても姉妹車のヴェルファイアの販売を熱望していたのだろう。

「広汽トヨタ」「一汽トヨタ」とはどんな会社?

一汽トヨタ エンブレム(中国製モデルの例)
一汽トヨタ エンブレム(中国製モデルの例)

広汽トヨタとは、広州汽車集団有限公司とトヨタ自動車株式会社の合弁会社で、車両を生産・販売する「広州トヨタ自動車有限会社(Guangzhou Toyota Motor Co., Ltd)」のこと。本社は広東省広州にあり、2006年央から「カムリ」の生産・販売を開始している。現在の生産車両は、中国国内およびアジア向けのカムリ、ヤリス、ハイランダー、カムリハイブリッドなど。

なお、広汽集団は、ホンダやフィアットクライスラー、三菱自動車とも合弁会社を作っており、それぞれ名称は広汽ホンダ、広汽フィアットクライスラー、広汽三菱となる。

同様に一汽トヨタは、中国第一汽車集団公司とトヨタ自動車の合弁会社のことで、天津や長春において2003年より、ランドクルーザー、ランドクルーザープラド、クラウン、カローラなどの生産を行っている。一汽集団は1953年に設立された中国最初の国有自動車メーカーで要人専用車「紅旗」でも有名だ。

LEXUS初のミニバンLMや、長年高級ミニバン市場を独占していたBUICK GL8の超VIP仕様も年内には発売される予定。中国高級ミニバン市場での4車対決が、今後どのように展開されて行くのか楽しみである。

[筆者:加藤 久美子/撮影:加藤 博人・トヨタ・LEXUS]

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