夏の始まり

 旬を過ぎていて、あるかどうか分からなかったが、探せばそれなりに見つかった。旧知の山の地主さんに許しを得て竹やぶに入ると、斜面にいくつかタケノコが頭をのぞかせている▲周りの土をよけ、慣れない手つきで根っこに近い所にくわを打つ。初春に比べると“細身”ながら、この時期のタケノコも思いの外、柔らかい。連休中、短い時間ではあったがいくらか爽やかな汗を流した▲長崎市の山際にクロスカントリーのコースがある。おととい、やや速足で何キロかのウオーキングを試みると、ここでも少しばかり汗ばんだ▲その日は「立夏」、暦の上では「山滴る夏」がやってきた。風は爽やかで、新緑に囲まれ、自然に親しんだ-のはいいとしても、タケノコ掘りにしろウオーキングにしろ、慣れないことをやったもので、まったくもう、体がこわばってしまって…▲立夏の頃に重なって、きのうからクールビズが始まった役所や企業もある。ノーネクタイや半袖で働き、冷房は28度を目安に設定を。長い連休が終わり、きのうはいまひとつ仕事に身が入らなかった人も多いだろう。衣服の襟は緩めつつ、心で襟を正しつつ▲〈新緑の香に新緑の風を待つ〉稲畑汀子。うっすらと汗ばむ時節は、みずみずしい新緑の匂いのする頃でもある。春の風味の終わりと重なって。(徹)

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