「そのぎ抹茶」本格始動 東彼杵に長崎県内初の原料工場

茶葉の水気を取る散茶機(手前)と長崎県内唯一の碾茶炉=東彼杵町

 抹茶の原料となる「碾茶(てんちゃ)」を生産する長崎県内初の工場が東彼東彼杵町八反田郷にオープンした。町内の若手生産者4人が法人をつくり「そのぎ抹茶」として販路拡大とブランド化を目指す。

 東彼杵町は、県内生産の茶葉の約6割を占める。昨年の全国茶品評会では蒸し製玉緑茶部門で、産地としても、個人としても、2連覇を果たした。一般消費者の試飲などで競う「日本茶AWARD(アワード)」でも2年連続で町内の企業が日本一に輝き、「そのぎ茶」の知名度は高まっている。

 一方で緑茶の消費量は減少傾向にあり、生産者の大幅な所得向上に結び付かない実情もある。若手生産者は抹茶に着目。ケーキやアイスクリームなどに加工しやすく、新たな市場が期待できるほか、海外輸出も増えているという。

 碾茶は、煎茶や玉緑茶と違い、蒸した後にもむ工程がなく、碾茶炉と呼ばれる装置で乾燥させる。通常の玉緑茶より色濃く、やわらかくするために、長く被覆をするなど栽培方法も異なる。

 30~40代の福田新也さん、大山良貴さん、尾上和彦さん、中山公輔さんは、株式会社「FORTHEES(フォーティーズ)」をつくり、「そのぎ抹茶」の生産体制整備に乗り出した。いずれも全国や県内の茶品評会で上位入賞した生産者。国の補助金も活用し、工場を建設した。茶葉の水気を取る高さ8メートルの散茶機や本県と佐賀県で唯一の碾茶炉を備える。通常は碾茶で出荷するが、注文に応じて粉末状の抹茶に加工する設備もある。

 7日に初めて茶葉が運び込まれ、加工が始まった。24時間稼働し、今年は15~20トンの生産を見込む。最終的には年間30トンを目指す。代表の福田さんは「そのぎ抹茶を、産地の新たな武器に成長させ、持続可能な茶業経営のモデルにしたい」と話している。

稼働が始まったFORTHEESの碾茶工場=東彼杵町

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