井伊家と「彦根」 【おとなの休日 in 彦根】

彦根に残る井伊家繁栄の足跡
JR彦根駅前 井伊直政像
彦根城 月明かりに浮かぶ彦根城は、琵琶湖八景の一つに数えられている。天秤櫓や太鼓門櫓など重要文化財に指定されている櫓、江戸時代から彦根のまちに時を知らせる時報鐘、軍事的な工夫が随所にみられる天守内部など見どころ満載。内堀では、屋形船に乗り、45分かけゆったりと彦根城の周りを周遊することができる。(*12~2月の冬季は3名以上で一週間以上前に要予約、3月中旬から定期船運行) ご予約・お問い合せ/NPO法人 小江戸彦根 TEL080-1461-4123

 井伊直政は、関ヶ原の戦いで多大な戦功を立て、徳川四天王の一人に数えられます。直政が彦根藩の初代藩主となって以来、彦根は井伊家によって治められました。彦根城は、直政の次男である直孝が20年の歳月をかけて築城し、1622年に完成させています。江戸時代、井伊家は多くの大老を輩出する譜代大名筆頭の家柄となり、幕末には開国に努めた井伊直弼が歴史にその名をとどろかせます。井伊家は明治以降も存続し、昭和に入ってからも井伊家の子孫が36年にわたり彦根市の市長を務めるなど彦根と深い関わりを持っています。

埋木舎(彦根藩公館・尾末町北御屋敷) 幕末の大老・井伊直弼が17~32歳まで過ごした場所。行く末が定まらない自らを埋もれ木に例えて「埋木舎(うもれぎのや)」と名付けた。
龍潭寺〈臨済宗〉 江戸初期の方丈建築には森川許六(彦根藩士・絵師・芭蕉十哲に数えられる俳人であり多芸の才人)による56枚もの襖絵が施されている。昊天禅師による方丈南庭「ふだらくの庭」、小堀遠州との合作である書院東庭「鶴亀蓬莱庭園」など彦根市の指定文化財となる名庭がある。禅宗の始祖の達磨大師にあやかり、三千個あまりのだるまが祀られ、だるま寺としても知られている。 拝観料/400円
歴史人に想いを馳せ自らに向き合う時間

 佐和山麓の龍潭寺は、井伊家の発祥地、静岡県浜松にある龍潭寺(井伊家菩提寺)が分寺された寺院です。日本で最初に「園頭科」(造園科)を設置し、境内にはムクゲ、芙蓉、菩提樹など数多くの植物が植えられ、寺を開山した昊天禅師による名庭や学僧たちが修行で手掛けた庭が残っています。禅宗の特徴的な方丈建築、森川許六による56枚の襖絵など見どころが多く、「心にも時間にもゆとりを持ち、じっくり拝観していただきたい」と第19代ご住職・北川宗暢さん。

 同じく佐和山のすそ野、彦根のまちを望む高台に静かにたたずむ「五百羅漢(天寧寺)」。凛とした空気が流れる吹き抜けのお堂には、三方の壁に整然と祀られる五百体もの羅漢群が200年以上もの時を越え、訪れる人を静かに見つめています。さまざまな表情を浮かべるその姿に「亡くなった肉親に似た顔を見つけることができる」といわれています。

五百羅漢 天寧寺〈曹洞宗〉 井伊家の菩提寺・隠居寺。境内には「井伊直弼供養塔」があり、桜田門外で暗殺された当時の血染めの土や衣装が供養されている。生前、直弼は父・直中が建立した天寧寺に度々訪れ、寺の奥には直弼が村山たかと密会したとされる部屋も現存している(非公開)。直弼を支えた腹心の家臣・長野主膳と村山たかの石碑も境内に残っている。 拝観料/400円

 「ここに来るといろんな思いが吐き出せる。井伊家の殿さまも、天寧寺へは心の休息に平服で来られたといわれています」と第18代ご住職・山路信乗さん。自らを見つめるために、会いたい人の顔を探しに、心が洗われるような井伊家ゆかりの寺を巡礼してみては。

取材:2016年12月

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