彦根に残る井伊家繁栄の足跡
井伊直政は、関ヶ原の戦いで多大な戦功を立て、徳川四天王の一人に数えられます。直政が彦根藩の初代藩主となって以来、彦根は井伊家によって治められました。彦根城は、直政の次男である直孝が20年の歳月をかけて築城し、1622年に完成させています。江戸時代、井伊家は多くの大老を輩出する譜代大名筆頭の家柄となり、幕末には開国に努めた井伊直弼が歴史にその名をとどろかせます。井伊家は明治以降も存続し、昭和に入ってからも井伊家の子孫が36年にわたり彦根市の市長を務めるなど彦根と深い関わりを持っています。
歴史人に想いを馳せ自らに向き合う時間
佐和山麓の龍潭寺は、井伊家の発祥地、静岡県浜松にある龍潭寺(井伊家菩提寺)が分寺された寺院です。日本で最初に「園頭科」(造園科)を設置し、境内にはムクゲ、芙蓉、菩提樹など数多くの植物が植えられ、寺を開山した昊天禅師による名庭や学僧たちが修行で手掛けた庭が残っています。禅宗の特徴的な方丈建築、森川許六による56枚の襖絵など見どころが多く、「心にも時間にもゆとりを持ち、じっくり拝観していただきたい」と第19代ご住職・北川宗暢さん。
同じく佐和山のすそ野、彦根のまちを望む高台に静かにたたずむ「五百羅漢(天寧寺)」。凛とした空気が流れる吹き抜けのお堂には、三方の壁に整然と祀られる五百体もの羅漢群が200年以上もの時を越え、訪れる人を静かに見つめています。さまざまな表情を浮かべるその姿に「亡くなった肉親に似た顔を見つけることができる」といわれています。
「ここに来るといろんな思いが吐き出せる。井伊家の殿さまも、天寧寺へは心の休息に平服で来られたといわれています」と第18代ご住職・山路信乗さん。自らを見つめるために、会いたい人の顔を探しに、心が洗われるような井伊家ゆかりの寺を巡礼してみては。
取材:2016年12月