[田路昌也の中国・香港ドローン便り]Vol.08 やっぱりParrot社ANAFIが好き!〜個人的コンスーマードローン市場の展望

昨年10月に「愛と別れの日々」編を寄稿してから半年。二カ月に一度ペースでのファームウェア更新を経て機能アップと安定性改善が整った感のあるParrot ANAFIの近況について、そしてコンスーマドローン市場への個人的な期待と展望をお話ししたい。

 

半年間で熟成したANAFI

追加機能、改善、修正に関しては相当の量になるのでご興味ある人はリリースノート(英語版)を見ていただくとして、主だったものを何点かここに記したい。

カメラ関係:パノラマモード(水平、垂直、360°)、スローモーション、Pastel/Intenseカラーモード、ヒストグラム、露出オーバー警告、各種設定変更保存 通信関係:欧州での5.8GHzバンドサポート、GPS情報、Wifi障害ノイズ対策、強風警告

ユーザーの声がしっかりと反映されているParrot社のこうしたアップデート内容はユーザーに高く評価されている。

Parrot社はエンタープライズ市場重視を明確にしており、スペアバッテリをセットにしたANAFI Extended版を積極的な価格で展開し、業務用途での導入コストの低さを売りにしている。

海外のAmazonやBest Buyなどでは機体セットや予備バッテリー二本付きExtended版をセールス時にUS$599~$699まで下げている。Facebookの海外ANAFIオーナーズグループを見ていても業務用に使っている人たちの意見交換が増えているようだ。

修理マニュアルもようやく整備され、保守パーツ提供も準備が整い、価格もこなれ、撮影能力が高まった今、ANAFIは魅力的な選択肢となっているのかもしれない。Facebookの日本人ユーザーグループであるANAFI Parrot Club JPでも後述するようなユニークな使い方をする強者が増えてきている。

 

コンスーマードローン市場の展望

ここで筆者の感じるコンスーマードローン市場の今後の展望について触れておきたい。

DJIは今後折り畳み式でないドローンの新製品投入を行わないと噂され、現行のSparkやPhantomは今後Mavic Air 2(仮称)とMavic 2 Pro/Zoomに集約されるという話もある。

Tello~Spark~Mavic Air~Mavic Pro~Mavic 2~Phantomという小型から大型まで幅広いコンスーマドローン製品を展開をしてきたDJIが製品ラインナップの整理を行うことで、空いた隙間セグメントのユーザーニーズをどれだけ取り込めるかが、ParrotやHubsan、Autel RoboticsやXiaomiといったドローンメーカーがコンスーマー市場で今後戦ってゆく上での鍵になると思われる。

機能競争がひと段落した今、狙う価格帯でどの機能を重視しどのようなユーザーエクスペリエンスを売りにするのかを各社は競ってゆくことになるのではないだろうか。

ホビーユーザーにしてみれば、高機能化の流れは歓迎するが、各国でのドローン規制強化という世界的な逆風の中、機能を絞り機体重量200g以下を実現して欲しいのも日本のユーザーの本音であろう。200g以下のドローン開発はDJIやParrotであれば十分可能なはず。

軽量化を実現するために割高になろうとも飛びつくホビーユーザーは世界中に多いはずである。YouTubeなどを見ていると、機体重量320gのANAFIを改造してANAFI 250にしている強者ユーザーも実際にいるくらいだ。

そんな中でParrotは4月15日にANAFI Thermalを発表。昨年の秋にMavic 2 Enterpriseを投入したDJI同様、業務用ドローンに売れ線のコンスーマードローンを流用する展開で停滞気味のコンスーマ市場依存から脱しようとしている。

大手ドローンメーカーは今後成長が見込まれる業務用ドローン市場で稼ぎ、新製品や新サービスの開発資金に充てるという流れが顕著になっていくのではないだろうか。

 

ANAFIならではのユーザーエクスペリエンス

筆者はDJIのMavic Proをメインで使っていた頃は静止画撮影ばかりで動画撮影はほとんどすることがなかったが、Parrot ANAFIを使うようになってから上向きチルトやズーム等に魅せられ動画撮影派に転向してしまい、最近は静止画を撮ることが激減するほどドローンの使い方が180度変わってしまった。愛用するドローンが変わることでユーザーエクスペリエンスも激変することを痛感したのである。

先日筆者はおもしろい実験をしてみたのでここで紹介してみたい。軽量・コンパクトなANAFIの良さを生かすべく、機体を操縦するコントローラーを使わずにスマホでの操作だけでANAFIがどの程度使えるものか、筆者の自宅のある離島の浜辺で行った実験である。

 

■500メートルの飛距離テストに挑戦した動画はこちら

Wi-Fi規格がFCCモードの香港でのテストなのでCEモードとなる日本で飛ばす場合より飛距離が伸びることは差し引いても、同時にテストしたMavic Airがコントローラ無しの場合は高度50メートル・飛距離100メートルで制限がかかるという意外な結果だったことを考えると、通信環境によっては機体とスマートフォンだけをもって出かけてもフライトプラン(Way Point)、フォローミー、各種自動撮影機能が使える利便さは評価してよいと思う。これらもANAFIのユニークな使い方のひとつではないかと思った次第である。

最後に、ANAFIの静音性能を生かしたユニークな空撮をされている方々のYouTubeチャンネルをここで紹介して今回の記事を締めたいと思う。

■小型イルカのスナメリ観察の動画はこちら
■渓流イワナ釣りの動画はこちら

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