酒井法子さんの謝罪会見に学ぶ6つの要素 第4回目 謝罪で失敗しないためには

 

自らの不手際や不備により、謝罪をしなくてはいけない場合がありますが、どのように謝罪すれば気持ちが伝わるのかは、案外分からないものです。最近、AAAの浦田直也さんのぶら下がり会見について解説を求められ、「声のトーンやせわしない動き」の問題点を指摘しました。そこで思い出したのが、2009年に覚せい剤取締役法違反容疑で逮捕され、保釈されたその日に記者会見を行った酒井法子さんです。私も当時、テレビでこの会見について解説しました。少し古い事例ですが、謝罪が伝わる内容でしたので今回取り上げることにしました。
 

謝罪に必要な6つの要素

社会心理学では、4つ、あるいは5つの要素があると謝罪の気持ちが伝わるとされています。私の経験値では、必要な要素は6つです。

 

初回に述べたポジションペーパーの5項目(1事実関係、2経緯と現状説明、3原因、4再発防止策、5見解)と多少重なりますが、違うのは「経緯」や「原因」といった客観性中心ではなく、「気持ち」を中心にすることです。

詳しくはこちら→■1回目 クライシス・コミュニケーションとは?

何をしたかの事実を述べる。申し訳ない、許されないという後悔の気持ち。自分の何が悪かったのかという反省の気持ち。罪を償いたいという贖罪(しょくざい)の気持ち。二度と起こさないという決意。そして「誰に」というステークホルダーが明確であること。ヒントは十分ですね。以下は、酒井さんの全文です。ご自身で要素を見つけてみましょう。

このたびは一社会人として人として、決して手を出してはいけない薬物というものに、自分の弱さゆえに負け、そして今このように世間の皆さまを騒がし、多くの皆さまにご迷惑をかけました。これまでに私を支え、応援してくださった皆さまにはどれほどの残念さと、私の無責任な行動に幻滅なさったことかと。このことには本当に計り知れない…、決して許されることではありません。この罪の償いを今後どのようにして償っていくのか、まずは自分の罪を悔い改め、二度とこのような事件に手を染めることのない、そういった誓いを一生の約束として固く心に誓います。私が犯しましたこのたびの出来事は、私を知る皆さまの信頼をすぐに回復することはできるものでないことはよく分かっております。ですが、日々感じております後悔の念、取り返しのつかないことをしてしまった自分の弱さを戒め、反省をし、もう一度生まれ変わった気持ちで心を入れ替え、日々努力していきたく思っております。そして、このような日々に支えてくださった方々の温かいお気持ちに、深く深く感謝しております。決して、二度とこのようなことで皆さまの信頼を裏切ることはありません。この気持ちを決して忘れることなく、皆さまのお気持ちに恩返しをしていきたいと思います。至らぬ点は厳しく指摘していただき、私自身、素直に拝聴して、新しい一歩を踏み出してゆきます。今まで応援してくださった日本や海外のファンの皆さま、お世話になった会社の皆さま、そして、今まで支えて下さったスタッフの皆さま、このたびは本当に、本当に申し訳ありませんでした。

忘れていけない非言語の要素

酒井さんの会見では、服装、ヘアメイク、涙も注目されました。黒っぽい服、ナチュラルメークで良かったと思います。「涙はいいのか悪いのか」といった質問は多数受けましたが、泣いていいのかどうかではなく、どこで流した涙なのか、が問題です。ある食品偽装をした会社は「ご先祖様に申し訳ない」といって流した涙がありました。その涙は批判されるのは当然です。「応援してくださった皆さんに申し訳ない」という涙を批判することに意味があるのでしょうか。

質問を受け付けないことも批判されました。記者会見とは本来「記者からの質問を受ける場」であることを考えるとクレームが来ることもあるでしょう。しかしながら、顔を見せるだけでも責任を果たすという考え方があってもよいだろうと思います。保釈中であること、答えることができないことばかり、精神的に耐えられない、ということであれば、コメント発表だけの記者会見は「あり」です。ただし、そういう時こそ、読み上げるだけの会見ではなく、どのような表情で、どんなトーンで、どのようなスピードで語るのか、が大切なのです。

(了)

 

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