平和のシンボル

 ハトが平和のシンボルとなったのは、旧約聖書の伝説に由来するという説がある。神が人類の堕落に怒って起こした洪水の中、ノアの箱舟から放たれたハトは、オリーブの枝をくわえて舞い戻り、水が引いて大地が現れたことを知らせた▲画家のピカソは平和をテーマにした作品のモチーフにハトをよく使ったという。日本でも戦後、原水禁世界大会などのポスターにしばしばハトが描かれ、平和のシンボルとして定着した▲そのハトが先日、長崎市が市制施行130年を記念して公募した「市の鳥」に決まった。得票はペンギンやメジロなどを上回り最も多かった。平和都市長崎にはハトがふさわしいと多くの市民が考え、平和を願う気持ちを託したようだ▲毎年8月9日の平和祈念式典でも放鳥されている。青い空をバックに白いハトの一群が飛び立つ光景は、まさに平和のイメージだろう▲ハトの仲間は世界中にいるという。だが言うまでもなく、ハトのいるところ、どこでも平和というわけではない。きのうはイランが核合意を一部停止する方針を表明した。またも平和が揺らぐ▲レース用のハトは千キロもの長距離を飛ぶという。平和を脅かすこともある国家や民族や宗教などの壁を、空を飛ぶハトのように乗り越えることができたら-そう夢想してみる。(泉)

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