木下和郎の詩情かみしめ 教え子らが「石楠花忌」 諫早・小長井

有明海を望む詩碑前で恩師の詩の心をかみしめる教え子たち=諫早市小長井町

 長崎県諫早市小長井町出身の詩人、木下和郎(1932~90年)をしのぶ「石楠花(しゃくなげ)忌」がこのほど、同町の詩碑「昭和十九年 秋」前で営まれた。教え子ら約30人が、人間への優しいまなざしに満ちた詩情をかみしめた。

 木下は旧北高来郡などで中学教諭を勤める傍ら、詩作に励んだ。石楠花忌は94年から毎年、旧北高高来町立湯江中(現在の諫早市立高来中)などの教え子でつくる「しのぶ会」(中溝章代表)が開き26回目。

 冷たい雨が降りしきる中、出席者は黙とうした後、詩碑に花と酒をささげた。中溝代表(77)は「中学卒業から六十数年、キャンプやテニスなどをともに楽しんだ先生の顔が目に浮かぶ」とあいさつした。

 この後、小長井文化ホールに場所を移し、諫早市芸術文化連盟の山下博之会長は「人間の尊厳を描いた詩は、激動の昭和を感じさせる」と評価。同市の伊東静雄研究会の上村紀元代表は、伊東と木下の詩を朗読し、「『文脈は平明に、詩の思いは深く』という共通点があり、生きた時代は異なるが、木下の詩作に伊東が影響を及ぼしたと推察される」と解説した。

© 株式会社長崎新聞社