『令和』元年だからこそ登りたい!?万葉集ゆかりの山5選 令和スタート!発表とともに一躍脚光を浴びている万葉集。いにしえの歌人が当時の文化や自然を美しい大和言葉で歌を詠っています。実は、詠まれている和歌には多くの山が登場することをご存知でしょうか?令和元年、せっかくなら万葉集ゆかりの山に登って見ては?本記事ではおすすめの山々の和歌と登山コースをご紹介します。

令和の出典元「万葉集」には山がたくさん

2019年5月1日より、元号が新たに『令和』となりました。典拠になったのは万葉集ですが、収めれている歌にはたくさんの山が詠まれていることをご存知でしょうか?

令和元年、せっかくなら万葉集ゆかりの山に登ってみませんか?ということで、本記事では万葉集で詠まれた山をご紹介してききます!

そもそも、万葉集とは?

万葉集は、奈良時代末期に編纂された日本最古の和歌集。収録されている和歌の詠み人は、天皇や貴族から防人や農民まで、様々な身分の人々であり、東北から九州まで日本各地の自然や文化を謡っていることが大きな特徴です。

【福岡県・四王寺山】太宰府にそびえる古代山城の山

  • 標高: 410m
  • 所在地: 福岡県太宰府市など
  • 体力レベル: ★~★★
  • 技術的難易度: ★~★★

「令和」の典拠、万葉集の序文は、今回ご紹介する四王寺山(しおうじやま)のふもとで詠まれました。

時に、初春の令月(れいげつ)にして、気淑く(き よく)風和ぎ(かぜ やわらぎ)、梅は鏡前の粉(こ)を披き(ひらき)、蘭は珮後(はいご)の香を薫す(かおらす)
引用元:万葉集 三十二首の序文「梅花(うめのはな)の歌」より

序文の「梅花の歌」が詠まれたのは、奈良時代に大伴旅人(おおとものたびと)が長官として太宰府に赴任していた時に主宰した歌会。この歌会が行われたのが、大伴旅人の邸宅跡、今の「坂本八幡宮」です。今回ご紹介する登山コースは、坂本八幡宮の横を通りますので、登山する際はぜひ参拝しましょう。

四王寺山登山コースの概要

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西鉄都府楼前駅(15分)→坂本八幡宮(10分)→四王寺山登山口(60分)→大城山(四王寺山主峰)(50分)→四王寺山登山口(25分)→西鉄都府楼前駅

西鉄都府楼(とふろう)前駅から出発し、途中、坂本八幡宮に参拝後、四王寺山の主峰、大城山(おおしろやま)へ登頂するコース。
標高差360m、登山道はわかりやすく特に危険な箇所も無いため、初心者でも問題ありません。

今、一大ブームの坂本八幡宮

坂本天満宮は、地元の方が時折訪れる程度の静かな神社でしたが、令和発表以後、ゆかりの地として脚光を浴び、一躍、名所としてたくさんの参拝者が訪れるようになりました。今では、参拝者の長い列ができ、周辺道路は交通規制されるようになったほどです。

所在地: 〒818-0133 福岡県太宰府市坂本3丁目14−23
電話番号:092-925-1880(太宰府観光協会)

いたるところに史跡が点在

四王寺山は、西暦663年に築造された日本最古の山城の石垣や、倉庫跡などの史跡が残っています。また、江戸時代に建立された33体の石仏が山全体に点在しており、登山を兼ねて、歴史探訪も楽しめますよ。

【奈良県・二上山】いにしえから謡われた美しい山容

  • 標高: 517m
  • 所在地: 奈良県葛城市、大阪府南河内郡太子町
  • 体力レベル: ★~★★
  • 技術的難易度: ★~★★

いにしえから奈良の人々に親しまれてきた「二上山(にじょうさん)」。飛鳥時代の悲劇の王子「大津皇子(おおつのみこ)」が葬られた山としても知られています。

うつそみの人にあるわれや明日よりは二上山を弟とわが見む
引用元:万葉集 巻2(165)より

この歌は、大津皇子の姉、大来皇女(おおくのひめみこ)が二上山を弟のように見えるとしのんで詠んだもの。二上山の端正な山容が愛しい弟のように見えたのかもしれません。この二上山は、気軽に登れる山として、今でも親しまれています。

奈良 二上山登山コースの概要

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近鉄二上神社口駅(90分)→雄岳(20分)→雌岳(60分)→當麻寺(20分)→近鉄当麻駅

標高差約410m、歩きやすいなだらかな登山道が続き、標識もしっかりとしている初心者向けコースです。

二上山は四季を通して色々な表情を見せてくれる山です。周辺には花の名所もあり、中でも専称寺の枝垂れ桜や、當麻寺や石光寺の牡丹は有名。

山頂近くに大津皇子のお墓がたたずむ

雄岳近くに大津皇子の墓所がひっそりとたたずんでいます。大津皇子は、文武両道、皇子でありながら謙虚で人々に慕われていましたが、謀反を疑われ自害した悲しい物語の主人公。1300年近くここに眠る大津皇子をしのび、静かに手を合わせましょう。

ふもとの當麻寺に参拝

雌岳から近鉄当麻駅側へ下ると、約1時間で當麻寺(たいまでら)に到着。當麻寺は、7世紀に聖徳太子の異母弟である麻呂古王が開いた由緒あるお寺です。国宝や重要文化財の建造物や仏像が数多く所蔵されています。

所在地: 〒639-0276 奈良県葛城市當麻1263
電話番号:0745‐48‐2001
拝観時間:9:00-17:00

當麻寺

二上山|ライトな登山がしたい人におすすめ!気軽に行けるハイキングコース2選
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【富山県・二上山】大伴家持に愛された山

  • 標高: 274m
  • 所在地: 富山県高岡市、氷見市
  • 体力レベル: ★~★★
  • 技術的難易度: ★~★★

奈良の二上山は「にじょうさん」、今回ご紹介する富山県の二上山は「ふたがみやま」。

玉くしげ 二上山に 鳴く鳥の 声の恋しき 時は来にけり
引用元:万葉集 巻18(4067)より

この歌は、大伴家持(おおとものいえもち)が、国守としてこの地に赴任していた時に、二上山を詠んだ歌です。

富山 二上山登山コースの概要

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二上まなび交流館(50分)→二上山(40分)→二上まなび交流館

二上まなび交流館から出発。約50分ほど、気持ちのいい自然林の歩きやすい登山道を登ります。標高差220m、登山というより、地元の方の散歩道という感じのハイキングコースです。

【二上まなび交流館】
所在地:〒933-0981 富山県高岡市二上20-1
電話番号:0766-21-0001

二上まなび交流館

遠く立山連峰を望む絶景

二上山は、山頂近くまで「二上山万葉ライン」というドライブコースが通じている観光地で、富山湾や立山連峰を望むことができる絶景ポイント。冬はドライブコースが閉鎖されているで要注意。

大伴家持の像が立つ山頂

山頂には、大伴家持の像が立っています。二上山を題材に8首も歌を詠んだ家持も、この絶景を眺めていたことでしょう。

【栃木県・三毳山】万葉集とカタクリの里

  • 標高: 229m
  • 所在地: 栃木県佐野市、栃木市
  • 体力レベル: ★~★★
  • 技術的難易度: ★~★★

三毳山(みかもやま)は、南北3.5kmに伸びる細長い山で、最高峰は229mの青竜ヶ岳です。

下毛野 みかもの山の 小楢(こなら)のす まぐはし児ろは 誰が笥(たがけ)か持たむ
引用元:万葉集 巻14(3424)より

この歌は、三毳山のコナラの若木を可愛らしい娘と例えた歌です。三毳山にはたくさんのコナラが自生する自然豊かな山。春、コナラの木の足元にはたくさんの可愛らしいカタクリが咲き乱れます。

三毳山登山コースの概要

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みかも山南口登山口(60分)→三毳山(青竜ヶ岳)(30分)→万葉自然公園カタクリの里(30分)→東口登山口(50分)→南口登山口

みかも山南口登山口から出発し、最高地点の青竜ヶ岳へ登頂。ここから戻ることもできますが、春のカタクリの季節であれば、その先の「万葉自然公園カタクリの里」まで足を延ばし、東口を経由し南口へ戻る周遊ルートもおすすめ。全体が公園として管理されていますので、気軽に歩くことができます。

春はカタクリ、花がたくさんの山

3月は、三毳山全体にカタクリが満開に。そのほか、春はイチリンソウ、チゴユリ、夏はキツネノカミソリ、秋はヤマトリカブトなどたくさんの花が楽しますよ。

山全体がみどころ満載の公園

三毳山は、南側は「みかも山公園」、北側は「万葉自然公園カタクリの里」として公園化されているため、見どころがたくさん。みかも山公園にある「万葉庭園」は桜や梅の名所です。

【栃木県営都市公園みかも山公園】
所在地:〒329-4308栃木県栃木市岩舟町下津原1747-1
電話番号:0282-55-7272
開園時間:3月~9月は8:30~18:30 10月~2月は8:30~17:30

万葉自然公園 かたくりの里

【万葉自然公園かたくりの里】
所在地:佐野市町谷町112-1
電話番号:0283-21-1187

みかも山公園

【福井県・日野山】にしえの歌人に愛された端正な山容

  • 標高: 794.4m
  • 所在地: 福井県越前市、南条郡南越前町
  • 体力レベル: ★~★★
  • 技術的難易度: ★~★★

参考:ヤマレコ
いにしえの郷、味真野(あじまの)の背後にそびえる日野山。越前富士とも言われる端正な山容は、万葉集をはじめ、平安時代には紫式部、江戸時代には松尾芭蕉の「奥の細道」など、古くから多くの歌人に詠われてきました。

日野山登山コースの概要

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日野神社(60分)→室堂(40分)→日野山(30分)→室堂(40分)→日野神社

日野神社を出発。自然林の登山道を登ると60分程度で不動明王が立つ室堂へ。山頂手前は急登になりロープを張っている場所もあり注意しながら登ります。自身が無ければう回路を利用しましょう。
室堂から40分、祠が立つ山頂へ到着。標高差720m、ちょっときついですが、最後のロープ場さえ気を付ければ初心者でも登頂可能。下山時、ロープ場は迂回することをおすすめします。

祠と絶景の山頂

日野山は西暦718年、泰澄(たいちょう)により開山されて以来、霊山として信仰されており、山頂には、日野神社奥宮の祠が立っています。山頂は広く整備されており、周りに遮るものも無いため、360度ビューの絶景。遠くに日本海、木曽の御嶽山、白山などを望むことができます。

自然豊かな庭園 「味真野苑」

日野山のふもとにある「味真野苑」は、ミズバショウ園など自然豊かな庭園です。ここは平城京より流された中臣宅守(なかとみのやかもり)と、都で宅守を慕う狭野弟上娘子(さののおとがみのおとめ)の和歌が、万葉集に収録されていることから万葉の里としても有名です。

味真野に 宿れる君が 帰り来む 時の迎えを いつとか待たむ
引用元: 万葉集 巻15(3770)より

これは、弟上娘子が、味真野の宅守へ送った歌。宅守と弟上娘子の恋物語から「恋のパワースポット」としても人気です。

所在地:越前市余川町55-1
電話番号:0778-27-2204
営業時間:9:00~16:30
(休館日 毎週月曜日(祝日を除く)、祝日の翌日、年末年始)

越前市 味真野苑

万葉集ゆかりの山は気軽に登れる山ばかり

今回は紹介した山以外にも、万葉集に詠まれた山は沢山あります。どれも、いにしえの時代から人々に愛され続けてきた山々ばかり。
低山も多く、初心者でも気軽に登れることも特徴です。新元号『令和』が始まったこのタイミングに足を運んでみてはいかがでしょうか?

【登山時の注意点】
・登山にはしっかりとした装備と充分なトレーニングをしたうえで入山してください。足首まである登山靴、厚手の靴下、雨具上下、防寒具、ヘッドランプ、帽子、ザック、速乾性の衣類、食料、水など。
・登山路も複数あり分岐も多くあるので地図・コンパスも必携。
・もしものためにも登山届と山岳保険を忘れずに! ・紹介したコースは、登山経験や体力、天候などによって難易度が変わります。あくまでも参考とし、ご自身の体力に合わせた無理のない計画を立てて登山を楽しんでください。

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