さまざまな要因で自然が損なわれていく昨今。
しかし、朽木に生きる人たちの活動から「手つかずの自然」が必ずしも自然保護とは言えないことがわかります。
私たちにできることとは―。
まずは、朽木の現状を知ることから始めてみませんか。
「生命の水」生み出す朽木のブナ・トチノキ
苔を抱く立派な幹、空を覆う枝、新緑の葉。朽木・生杉地区、ブナ原生林の大木です。朽木は琵琶湖の西側、南北に連なる比良連山の西北に位置しています。
「ブナは非常に保水力が高く、直径30㎝のブナの木は、根から葉まで約2トンの水を貯えている。そして大地に張り巡らされる無数の根が山肌を支えている」と話すのは森の案内人を務める今井 尚さん。ゆっくりとした速度で森に浸透した水は、針畑川など安曇川の支流に流れ込み、冷たくきれいな水を安定した水量で琵琶湖に供給しています。
自然界を支えながら数百年という歳月を経た神秘的な巨木に出会うと、誰もが時を忘れ、神と向き合うときと同じような敬虔で厳かな気持ちになります。
朽木では、乱伐によって激減したブナやトチノキなど“山の神”と、滋賀の“水源の森”を保護する活動が進められています。
本当の「自然保護」とは自然との折り合いをつけること
地元の人々は地野菜や山菜、栃の実などを使った特産物を商品化、また自然体験や民宿などの観光業なども行い、地域の自然維持と活性化に努めています。
自らが所有する土地だけでなく、管理者が不足している土地なども借り入れ、山菜摘み農園を営む西澤恵美子さんは「人間が少し手助けすることで土地が自活する。荒地をできるだけなくすために獣害防護柵を設置し、山菜を植えて都会の人に朽木の魅力を伝えている」とのこと。
また、幹線道路から外れた静かな場所で朽木の山川の幸を提供する「お食事処 はせ川」は、素材の良さを繊細な技で引き出した料理が評判を呼び、“朽木の隠れ家店”として遠方からもお客さまが訪れます。
朽木で出会ったさまざまな人から「自分の代の現状を守っていきたい」との言葉が聞かれました。次の代につなぐため、懸命に活動する朽木の人たちの想いを知ったうえで訪れると、また違った角度から朽木を見ることができるのではないでしょうか。