鏡のような湖が映し出す「余呉」の今昔 【おとなの休日~in 余呉~】

伝説・戦史・伝統の食文化

豊かな自然が息づく静かな「余呉」。

まちの歴史と文化にふれながら、ただゆったり、心穏やかに余呉湖に映し出される四季折々の風情を感じてみませんか。

余呉湖の自然と歴史

奥琵琶湖の北側に位置する余呉湖。面積1.75㎢、周囲6㎞の湖は、三方を山に囲まれ、湖面は穏やか。山々を静かに映す様から、鏡湖とも称されています。

北岸には大きく枝を張る柳の大木が。余呉町には、余呉湖を舞台とした「羽衣伝説」がいくつかあり、この柳は天女が羽衣を掛けた衣掛柳といわれています。

賤ヶ岳合戦図屏風 /長浜城歴史博物館蔵 賤ヶ岳合戦【天正11年(1583年)】 織田信長の没後、羽柴秀吉(豊臣秀吉)と柴田勝家による天下分け目の争いが激化。両軍は木之本や余呉に多数の砦を築城し、余呉湖畔でも壮絶な戦いが繰り広げられました。この合戦に勝利した秀吉は、天下取りへと躍進します。
豊臣秀吉像/長浜城歴史博物館蔵

余呉湖の南方にある山並みは、約400年前、羽柴秀吉と柴田勝家によって繰り広げられた「賤ヶ岳の合戦」の舞台となった賤ヶ岳(標高421m)です。ここから見下ろす美しい景色からは、湖畔の大激戦を想像することはできません。しかし山野に多数残る両軍の砦跡や戦の石碑などが、かつて確かにこの地が壮絶な歴史を辿ったことを物語っています。

賤ヶ岳戦跡碑・武将像 奥琵琶湖随一の景勝地「賤ヶ岳」の山頂広場には、戦跡碑や戦没者の碑が建てられています。この他にも北麓には数多くの戦死者の墓や遺跡が点在しています。
伝統の食文化 発酵料理「熟鮓」
飯(いい)・熟れからすみ・鮒ずし 徳山鮓ならではの「熟鮓」の味とは。
飯(いい)・熟れからすみ・鮒ずし 徳山鮓ならではの「熟鮓」の味とは。

 寒冷地の余呉では、厳しい寒さをしのぐため、古来より保存食が作られ、周辺で獲れる鮎や鮒、敦賀から入る鯖などの魚を塩と米飯と共に発酵させる熟鮓(なれずし)が親しまれてきました。熟鮓は、乳酸菌発酵によって魚が骨まで柔らかくなり、栄養学的にも優れた「滋養食」として年中食べることができます。

飯のアイスクリーム

 「発酵なくして和食は語れない」と話すのは、余呉湖畔の料理旅館、徳山鮓のご主人・徳山浩明さん。地域の食材を使って華やかに彩られた料理からは、発酵料理の魅力を伝えたいとの熱い思いが伝わってきます。

 醤油、味噌、出汁の素材など、和食は発酵と深い関わりがあります。寿司の原点ともいえる発酵料理を改めて知りたいと、徳山鮓には全国から食通や名立たる料理人たちがやってきます。

 こだわり抜いた発酵料理を提供する徳山さんをはじめ、余呉湖や琵琶湖周辺でさまざまな人々が“鮒ずし”などの郷土料理を復活させる取り組みを行い、近年、再び滋賀の発酵料理が脚光を浴びています。


徳山鮓(とくやまずし)
熟鮓をはじめとする発酵料理、ジビエ、山菜、湖魚を使った料理をコース仕立てで味わうことができる料理旅館。館内からは、美しい余呉湖が一望できます。(要予約)

滋賀県長浜市
余呉町川並1408
TEL:0749-86-4045
FAX:0749-86-4050
http://www.zb.ztv.ne.jp/tokuyamazushi/

■情報誌「自悠時間」2015年12月掲載

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