長崎県壱岐市に伝わる方言「壱州弁」についてまとめた書籍「き~ちみしゃべっちみ 壱岐島の方言事例集」を、壱岐市勝本町の元市教委教育次長、鳥巣修さん(73)が自費出版した。あいさつや特徴的な言葉など約2千語を紹介した。
市職員だった鳥巣さんは壱州弁に関心があり、普段から使ったり耳にしたりしていた方言をメモしていた。定年後の2008年10月、成果をまとめた壱州弁の書籍を刊行。今回出版した事例集は増補改訂版で、デザインを一新して写真やイラストを盛り込み、「あいさつ」「おもしろか」などの項目別に方言を紹介した。
「いっきょいな(ものすごい)」、「やをいかん(簡単ではない)」など日常で使う言葉から、最近ではあまり耳にしなくなった言葉まで幅広く掲載。あいさつの項目では、「いっちくる(行ってきます)」。遠慮する時の「いーんげ(いいえ)」などを取り上げた。
「おもしろか」の項目では、「みちみちみちみ(道を歩きながら見てごらん)」などを紹介。特徴的な壱州弁をランク付けした「方言番付」では、家族全員を意味する「けねやね」を最上位の横綱に選んだ。
壱州弁は福岡の方言に近いと言われるが、勝本浦地区独特の勝本弁はかなり異なっている。同書によると、江戸時代に捕鯨で栄えた同地区は兵庫、広島、香川、島根など多くの地とクジラを買い付ける船が往来したため、言葉が複雑に混じり合ったという。勝本弁は「ら行」を「い」に言い換える特徴があり、「あれ」は「あい」と言われていることを解説している。
鳥巣さんは「学術的には正確さを欠くものもあるかもしれないが、日常生活で気になった方言を調べたり、壱岐から離れた人が島を思い出すきっかけになったりすればうれしい」と話している。
価格は1200円。壱岐市内の書店で販売中。