スーパーバイク世界選手権(SBK)第5戦イモラがイタリアのイモラ・サーキットで行われ、ジョナサン・レイがレース1で今季初優勝を飾った。レイはスーパーポール・レースでも優勝し、2連勝。ただ、スーパーポール・レース後に行われる予定だったレース2は、天候によりキャンセルとなった。また、スーパースポーツ世界選手権(WSS)で大久保光が自己最高位の4位フィニッシュを果たしている。
第5戦イモラには元MotoGPライダーのエクトル・バルベラ(Orelac Racing VerdNatura)が代役参戦してカワサキZX-10RRを駆り、また、ロレンツォ・ザネッティ(モトコルサ・レーシング)がワイルドカードとしてエントリーした。
土曜日に行われたスーパーポールでは転倒により2度の赤旗中断が発生。約25分の中断を挟んでセッションが再開した。そんななか、最後のアタックで最速タイムをマークしたチャズ・デイビス(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)がレース1とスーパーポール・レースのポールポジションを獲得。2番手にはジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)がつけ、ポイントリーダーのアルバロ・バウティスタ(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)は3番手に並んだ。
レース1は、初日のフリー走行1回目で転倒し、両手首を骨折したユージン・ラバティ(チーム・ゴーイレブ)に代わってトミー・ブライドウェルが参戦。また、レオン・キャミア(モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム)はスーパーポールの2度目の赤旗中断前に転倒を喫し、このときに負った左肩の負傷によりレース1のグリッドには並ばなかった。
レース1は気温21度、路面温度28度のドライコンディションで行われた。3番手から好スタートを切ったレイが、オープニングラップ2コーナーでポールポジションスタートのデイビスを交わし、トップに浮上。そのデイビスはレイにトップを奪われたのち、まさかのスローダウン。マシントラブルにより、デイビスはそのままピットに戻ると、リタイアを余儀なくされた。
レースを引っ張るレイは、3周目には1分46秒023のファステストラップをマーク。このタイムでファステストラップのレコードタイムを更新し、2番手につけるバウティスタとの差を約1.5秒にまで広げる。バウティスタもやはり1分46秒前半のタイムでレイを追うが、わずかにレイの速さが上回り、じりじりとその差が開いていく。
レース中盤に入ってもレイのペースは衰えず、一方、2番手のバウティスタはややタイムを落とす。9周終了時点で、レイはバウティスタに対しアドバンテージを約5秒にまで積み上げ、独走態勢を築く。その後もレイは、安定したラップタイムで周回ごとにバウティスタを引き離していった。
2番手のバウティスタ、そしてその約10秒後方にトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が続いていたが、サイクスは10周目にピットに戻り、戦線を離脱。代わって3番手に浮上したのはトプラク・ラズガットリオグル(ターキッシュ・プセッティレーシング)だが、そのラズガットリオグルにマイケル・ファン・デル・マーク(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)が迫る。
残り5周、ラズガットリオグルとファン・デル・マーとの差は0.5秒以内。ふたりはテール・トゥ・ノーズの争いを繰り広げる。残り2周、ファン・デル・マークがぎりぎりのブレーキングでラズガットリオグルをオーバーテイク。しかしラズガットリオグルも負けじと再び3番手を奪い返す。さらにふたりの後方には、レオン・ハスラム(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が迫る。
一方、レースをリードし続けるレイは独走を守り切り、ついにトップでチェッカーを受けた。2018年までレイが何度も見せてきた独走優勝。速さでレースをけん引する展開で今季初の優勝を挙げ、ディフェンディングチャンピオンがついに表彰台の頂点に返り咲いた。
2位はここまで11連勝を上げてきたバウティスタ。バウティスタにとって初めての経験となるイモラ・サーキットで、2位表彰台を獲得。終盤に激しく争われた3位は、ラズガットリオグルに軍配が上がり、表彰台の最後の一角を獲得した。
4位はラズガットリオグルとバトルを演じたファン・デル・マーク。5位にはハスラムが入った。清成龍一(モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム)は14位入賞を果たしている。
■SBK第5戦イモラ レース1順位結果(19周)
Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap
1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 33’48.277
2 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 7.832
3 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 19.291
4 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 19.968
5 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 20.111
6 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 31.846
7 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 32.024
8 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 34.107
9 87 L.ザネッティ モトコルサ・レーシング(ドゥカティパニガーレV4 R) 34.814
10 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 40.196
11 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 51.426
12 46 T.ブライドウェル チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 55.235
13 80 H.バルベラ Orelac Racing VerdNatura(Kawasaki ZX-10RR) 56.539
14 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 1’01.025
15 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 1’27.025
RET 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 5 Laps(リタイア)
RET 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 10 Laps(リタイア)
RET 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 18 Laps(リタイア)
■スーパーポール・レース:レイが独走。今週末で2連勝飾る
スーパーポール・レースは気温13度、路面温度16度で、ところどころにウエットパッチが残る路面状況。気温も前日に行われたレース1にくらべ、かなり低めのなかで行われた。
また、このレースではサイクスがウオームアップラップでピットに戻ったためピットレーンからのスタートとなり、前日のスーパーポールで転倒したキャミアは、この日のレースも欠場している。
スタートからトップを守ったのはポールポジションスタートのデイビス。しかしその背後にはレイがぴったりとつけ、最終シケインの飛び込みで、ねらいすましたようにデイビスをアウトからオーバーテイクする。
そのレイを追って、バウティスタが最終シケイン出口でデイビスに並ぶとメインストレートの加速で2番手に浮上。トップがレイ、2番手バウティスタという、前日に行われたレース1と同様のオーダーとなる。デイビスは3番手で、このふたりを追いかける展開。
トップに立ったレイは2周目、3周目、さらに4周目とファステストを連発。レース折り返しの5周目を終えるころには、バウティスタに対し1秒以上のアドバンテージを築いていた。バウティスタはレイとの差を広げられる一方、3番手のデイビスに迫られる形となる。6周目、デイビスがバウティスタをオーバーテイク。2番手に浮上する。
デイビスはバウティスタを交わしたあとの7周目に1分45秒727のファステストラップを叩き出すと、バウティスタを引き離し、レイを追う。このタイムは、レース1でレイが記録したファステストラップのレコードタイムを更新するものだった。しかしレイもラップタイムを落とすことなく、デイビスに接近を許さない。
最終的にレイはトップを守り切り、レース1に続く優勝を飾った。2位はレース1で不運のマシントラブルに見舞われ、リタイアとなったデイビス。この表彰台獲得によって前日のトラブルの溜飲を下げた。3位はバウティスタで、13戦連続の表彰台獲得を果たしている。
4位はラズガットリオグルなどと激しいポジション争いを展開したファン・デル・マークが入り、5位はアレックス・ロウズ(パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム)、清成は16位でレースを終えている。
■SBK第5戦イモラ スーパーポール・レース順位結果(10周)
Pos. No. Rider Team/Machine Time/Gap
1 1 J.レイ カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 17’45.405
2 7 C.デイビス Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 2.141
3 19 A.バウティスタ Aruba.it レーシング-ドゥカティ(ドゥカティ パニガーレV4 R) 6.864
4 60 M.ファン・デル・マーク パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 10.817
5 22 A.ロウズ パタ・ヤマハ・ワールドSBKチーム(ヤマハYZF-R1) 14.212
6 91 L.ハスラム カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK(カワサキZX-10RR) 14.522
7 54 T.ラズガットリオグル ターキッシュ・プセッティレーシング(カワサキZX-10RR) 20.484
8 66 T.サイクス BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 20.764
9 81 J.トーレス チーム・ペデルチーニ・レーシング(カワサキZX-10RR) 20.957
10 28 M.ライターベルガー BMWモトラッド・ワールドSBKチーム(BMW S1000RR) 25.917
11 46 T.ブライドウェル チーム・ゴーイレブン(ドゥカティパニガーレV4 R) 26.820
12 87 L.ザネッティ モトコルサ・レーシング(ドゥカティパニガーレV4 R) 31.698
13 11 S.コルテセ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 32.716
14 80 H.バルベラ Orelac Racing VerdNatura(Kawasaki ZX-10RR) 34.097
15 21 M.ルーベン・リナルディ バーニーレーシングチーム(ドゥカティ パニガーレV4 R) 36.049
16 23 清成龍一 モリワキ-アルティア・ホンダ・チーム(ホンダCBR1000RR) 36.371
17 33 M.メランドリ GRTヤマハ・ワールドSBK(ヤマハYZF-R1) 40.673
18 52 A.デルビアンコ アルティア・ミエ・レーシングチーム(ホンダCBR1000RR) 42.406
■SBKレース2は天候によりキャンセル。WSSの大久保光が4位フィニッシュ
レース2はWSSのレース中に降り出した雨により、スタートディレイ。約45分のディレイののちレーススタートが宣言され、サイティングラップが行われてライダーたちは一度グリッドについた。しかし再びレースディレイが宣言されてライダー、マシンともにピットに戻った。
その後も天候は回復せず、当初のスタート時刻から約1時間30分後、SBK第5戦イモラのレース2はキャンセルとなることが発表された。また、SBKレース2のあとに開催される予定だったスーパースポーツ世界選手権300(WSS300)の決勝レースも、同時にキャンセルとなっている。
SBKのレース2前に行われたWSSでは、ランディ・クルメンナハ(BARDAHL Evan Bros. WorldSSP Team)、フェデリコ・カリカスロ(BARDAHL Evan Bros. WorldSSP Team Y)によって終盤まで優勝争いが展開されていたが、マッシモ・ロッコリ(Team Rosso Corsa)がラストラップの18コーナーで転倒したことにより赤旗が提示され、そのまま終了。
クルメンナハが優勝し、カリカスロが2位とヤマハがワン・ツー。3位にはラファエレ・デ・ロサ(MV AGUSTA Reparto Corse)が入った。日本人ライダーの大久保光(カワサキ・プセッティ・レーシング)は5番手グリッドからスタートし、10番手にまでポジションを落としたが、最終的に4位でフィニッシュ。大久保にとって自己最高位フィニッシュを果たした。