セ・リーグで唯一新人の1軍登録がない中日 ドラ1根尾&ドラ2梅津の現在地は?

中日・根尾昂【写真:福谷佑介】

根尾は2軍で打率.143「プロの変化球は受け身では打てないし、見極められない」

 今年もルーキーが躍動している。

 巨人の高橋優貴は3勝をあげ、DeNAの大貫晋一は2勝をマーク。広島の島内颯太郎は開幕1軍を掴み、ヤクルトの坂本光士郎もプロ初登板を経験。阪神の近本光司と木浪聖也はチームの主力として何度も勝利に貢献している。

 実はセ・リーグで中日だけが新人の1軍登録がない。期待の2人の現在地を探った。

 4月19日。ナゴヤ球場。19歳の誕生日を迎えたドラフト1位ルーキー根尾昂は左手人差し指に包帯を巻いていた。3日前に走者と交錯し、8針を縫う怪我をしていたのだ。

「もうすぐ抜糸できます。復帰は近いと思います」

 言葉通り、5月4日に実戦復帰した。ここまで28試合で打率.143。106打席で36個の三振を喫している。

「山岡(泰輔)さんのスライダーには驚きました」

 オリックスの開幕投手が調整登板した3月15日。根尾の公式戦第1打席は見逃し三振だった。最後のスライダーに手も足も出なかった。

「コーチの方からも言われているのですが、プロの変化球は受け身では打てないし、見極められない。必ず打ちに行かないと。今は対応できず、悔しいです」

 唇を噛む根尾の目には闘志が宿っていた。この「打ちに行って見極めること」が体得できず、三振の山を築いている。石井昭男2軍打撃コーチに現状を聞いた。

「マシン打撃は文句なし。ストライクばかりだから、全て自分のポイントで打てる。長所はインパクトの強さ。打球音が全然違う」と目を細める。

 一方で、課題もある。

「試合ではボール球が来る。すると、当然、見逃す。今はその見逃し方が問題。打ちに行って、見逃さないと」

 根尾の言葉と一致する。選手と首脳陣は同じ理解で同じ方向を向いている。

「飛んでいる鳥を目と顔で追ったら、絶対に撃てない。目は動かしても顔は動かさず、ここに来ると狙いを定めて撃たないと。ボールもキャッチャーミットに到着するまで顔ごと追ってはダメ。打ちに行って自分のポイントに来るかどうか判断する。来たら、振る。来ないと思ったら、やめる」

 餅つきにも例えた。

「杵で餅をつこうとする。臼の横にいる人の手が出てきたら、パッとやめる。その感覚。杵を持ったまま、つきに行かず、ずっと手を見ていたら、絶対に餅はつけない」

 解決方法を明示した。

「始動を早くして、ボールを見る時間を長くとって、打ちに行く」

 偉大な打者を引き合いに解説を続ける。

ドラ2梅津は「入団した頃の大谷翔平」と小笠原2軍投手コーチ

「まず、王(貞治)さん。ピッチャーが足を上げた時にはもう一本足で待っていた。とにかく始動が早い。必ず打ちに行って、ボールと思ったら、やめる。だから、フォアボールも多い。あとはイチロー。彼も打ちに行く。ただ、すごいのは少々のボール球でも打ってしまう。だから、フォアボールは少ない。でも、ヒットは増える。やめずに振るから」

 世界のホームラン王か、稀代のヒットメーカーか、どちらを目指すべきか。

「その間だね。『根尾』を作ればいい」

 ドラフト2位の梅津晃大は1月に右肩を故障し、キャンプは別メニュー。そこから地道にリハビリをこなし、1イニングずつではあるが、2軍で2試合に先発。自責点はゼロだ。しかし、東洋大学の同級生たちは先を走っている。ソフトバンクの甲斐野央は開幕から13試合連続無失点の新人記録を樹立した。

「甲斐野の力はずっと見て来たので、活躍すると思っていました。ただ、その能力をきっちり発揮できるのがすごいです」

 DeNAの上茶谷大河の登板は寮でテレビ観戦している。

「同じ先発ですし、特に刺激を受けています。1軍相手に立ち向かっている姿を見て、僕も頑張ろうと」

 梅津の今を小笠原孝2軍投手コーチが語った。

「ストレートは非常にスピンが利いています。スピンが多いと、よく飛ぶと言われますが、力もあるので、バッターを押し込めています。ただ、確率が低い。回転軸が斜めでシュート成分が多く、球が抜ける。また、引っ掛けることもあるので、上下より左右にばらつく傾向です」

 変化球はどうか。

「スライダーは『キュッ!』と音がしていると思うほど鋭く曲がる。すごいブレーキです。1軍で十分通用しますが、やはり確率の問題ですね」

 今後のステップは慎重だ。

「次は50球がめど。怪我明けなので経過をしっかり見ないと。投げた翌日、その翌日と反動をチェックしています」

 タイプは誰か。

「入団した頃の大谷(翔平)ですね。(宮崎)フェニックスリーグで見ていますが、体形やフォームだけでなく、球の荒れ方まで似ている。素材は間違いないです」

 ドラフト1位と2位、2人の現在地。それは、まだ1軍に近いとは言えない。戦いが始まっている以上、新人の今の力は大きい。しかし、重要なのは彼らの「最終到達地」に違いない。2人が咲かせる花はきっと大きく美しい。その日まで待つ。中日ファンに焦りは禁物だ。(CBCアナウンサー 若狭敬一/ Keiichi Wakasa)
<プロフィール>
1975年9月1日岡山県倉敷市生まれ。1998年3月、名古屋大学経済学部卒業。同年4月、中部日本放送株式会社(現・株式会社CBCテレビ)にアナウンサーとして入社。テレビの情報番組の司会やレポーターを担当。
また、ラジオの音楽番組のパーソナリティーとして1500組のアーティストにインタビュー。2004年、JNN系アノンシスト賞ラジオフリートーク部門優秀賞。2005年、2015年、同テレビフリートーク部門優秀賞受賞。2006年からはプロ野球の実況中継を担当。
現在の担当番組は、テレビ「サンデードラゴンズ」(毎週日曜12時54分~)「High FIVE!!」(毎週土曜17時00分~)、ラジオ「若狭敬一のスポ音」(毎週土曜12時20分~)「ドラ魂キング」(毎週金曜16時~)など。著書「サンドラのドラゴンズ論」(中日新聞社)。

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