できることや得意なことよりも、できないことにチャレンジしたい ミュージカル俳優  渡辺爽(あきら)さん

渡辺爽(あきら)さん 岐阜県出身。ネブラスカ大学カーニー校卒業。2017年にインディアナ州のRound Barn Theatreに所属。18年からニューヨークで活動。https://www.akirawatanabe.us/
Sharon Campbellさん ネブラスカ大学カーニー校 ボイスティーチャー 彼女は非常にハイレベルの芸術性、想像力、コラボレーション精神、そして秀でた勤勉さと努力を兼ね備えた、エキサイティングなアーティストです。私はそんな爽のボイスティーチャーであることを、とても誇りに思います。

ミュージカル俳優を目指した理由は?

昔からスポーツや勉強が得意でしたが、歌とダンスだけはいくら頑張っても苦手。子供の頃に通っていたダンス教室の先生から、「あなたはダンスだけはやめたほうがいい」と言われたほどで、歌も音程が取れないくらいでした。でも私はできることや得意なことよりも、できないことにチャレンジすることが好きだったので、歌とダンスに挑戦しようと思いました。

もう一つのきっかけは、幼いころに宝塚歌劇のショーを見たこと。ステージが放つエネルギーに衝撃を受け、ミュージカルをやりたいとずっと思っていました。

留学したきっかけは?

進路を決める時に、東京の音楽大学に行きたいと母親に相談したら、「上京するとすごくお金がかかる。留学なら学費を出す」と言われて。あわてて英語の勉強をして、ネブラスカ大学カーニー校に留学、ミュージカルシアターを専攻しました。

卒業後、オーディションを受けても落ち続けて、もう帰国しようかと考えていた時に、運良くインディアナ州の小さなシアターから声が掛かり、そこで活動していました。そのうち本場ブロードウェーに挑戦してみたくなって、ニューヨークに拠点を移しました。

インディアナ州のRound Barn Theatreで行われたミュージカルショー「Guy and Dolls」に出演

ミュージカルの魅力は何ですか?

ミュージカルはショービジネスですが、そのエンタメ性とアートの中間に位置付けられる「ミディアム感」が好きです。観る人がリラックスして楽しんでくれて、でもそれだけでなく、作品の中にメッセージを入れて表現する。

ネブラスカ大学カーニー校のストリートプレー作品「Lady from the Sea」。オリジナルになかったシーンを、ディレクターが渡辺さんを指名して追加した

渡辺さんの強みは?

歌や踊りが上手といったテクニックではなく、湧き上がるパッションをステージで伝えることが私の強みで、そういう俳優であり続けたいです。

大変なことは?

オーディションに落ち続けているとやっぱり辛くて、最初のころはよく落ち込んでいました。でも実際、周りは才能がある人ばかりで、自分が落とされた理由も納得できるので、今は開き直って次を見るようにしています(笑)。

逆にうれしいことは?

たとえオーディションに落とされても、歌って踊っているだけで楽しいです。私は「とにかくミュージカル俳優一筋」で頑張っている人とは、おそらく姿勢が違いますが、どんな時でも歌って踊っていられたら幸せです。そして、ラッキーにも親や周りの人の後押しのおかげでここまで来られたと、感謝しています。

5年後、10年後は?

近い将来には、ブロードウェーの舞台で「シカゴ」を演じたい。そのためにはエクイティー(舞台俳優などの労働組合)のメンバーにならないとオーディションへの参加が難しいので、まずはそこを目指します。

10年後には、私の母のような、母親になっていたい。でも踊って歌うことは、どこで何をしていようと、どんな形であっても、表現・発信し続けていきたいです。

ユーチューブチャンネル「KiSSo」に、ダンスや歌をアップしている。ブルックリン橋をバックに友人と踊っている動画の1カット

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