五島高生 地域に貢献 課題に「ドローン」活用 漂着ごみの流出元分析

海岸に漂着した空き缶やペットボトルなどのごみを調べる(左から)塩竃さん、宮崎さん、山口さん=五島市富江町

 長崎県立五島高(長崎県五島市池田町)の生徒たちが、地域の中で学びを深めている。二つのチームが今月、市内で「海ごみ」や「ドローン」をテーマにしたイベントをそれぞれ2日間開催。参加を呼び掛けている。地元住民や専門家の協力を得ながら、地域貢献に取り組む姿を追った。

 ■関心 

 4月下旬。同市三井楽町の旧浜窄小体育館に、五島高3年の福嶋通明(なおあき)さん(17)と中村憲貴(かずたか)さん(17)の姿があった。「この跳び箱も使えそう」「飛ばしてみよう」。福嶋さんがコントローラーを操作すると、跳び箱や三角コーンで作ったコースをドローンが飛び回った。今月25日のレース大会に向けたテストだ。

 2人は昨年、同校の探求学習「バラモンプラン」のテーマに、趣味のドローンを選択。当初は単にレース大会による地域活性化を考えた。しかし海岸を空撮した際、写り込んだ漂着ごみに気付き、「美しい海が台無しだ」と海ごみ問題にも関心が向いた。

 その後、「GOTONE(ゴトーン)」と名付けたチームを結成。市の事業にも、海ごみ調査や離島間物流などにドローンを活用する動きがあると知り、ドローンによる地域課題解決の可能性を考えるイベントを開くことにした。

 ■支援 

 開催に向けた課題の一つは費用。協力者の助言も受けながら、3月下旬、ネット上で資金を募るクラウドファンディング(CF)に挑戦。反応は予想以上に大きく、開始から36時間で目標の70万円に達した。

 最終的に島内外の約50人から100万円余りが寄せられ、高額な大会ネーミングライツ(命名権)で協力してくれた人も。また活動を公開したことで、複数のドローン専門家からも協力の申し出があった。サポートする同校の樫本英人教諭は「CFによって新しい人脈や責任感が生まれ、生徒にとっても資金以上の財産になっている」と話す。

 イベントでは、手のひらサイズの小型ドローンを使ったレースの他、海水浴場などでの空撮コンテスト、ドローン展示会、市職員らによる講演会などを予定。福嶋さんは「海ごみは難しいテーマだけど、ドローンと一緒に楽しく考えてほしい」、中村さんは「多くの人に協力してもらった。自分が大人になった時には、高校生をサポートしていきたい」とそれぞれ話す。

 ■連携 

 GOTONEと連携し、海ごみ調査に取り組むもう一つのチームが「mai→pla(マイプラ)」。同校3年でリーダーの宮崎幸汰さん(17)、塩竃凜河(しおがまりんか)さん(17)、山口紗永さん(17)の3人が中心メンバーだ。これまで市内の海岸で計6回、漂着したペットボトルや空き缶などが、どの国から流出したか分析、集計する調査を実施。全国的にも注目を集めている。

 18、19日に同校でシンポジウムを開催し、大学や自然保護団体の専門家による講演会やワークショップを企画。海ごみ削減に向けた宣言文も作成する。「環境問題は身近なところから変えられると知ってほしい」と参加を呼び掛けている。

 ◎五島市高校生環境シンポジウム/18、19日

 18日午後1時、五島市池田町の五島高で開会式。九州大大学院の清野聡子准教授や、世界自然保護基金(WWF)ジャパン自然保護室の市川大悟氏が講演。ワークショップで海ごみ削減に向けた宣言文作成にも取り組む。

 開会に先立ち、18日午前9時~11時に▽田尾海岸(富江町)▽八朔鼻(岐宿町)▽大津みなと公園近くの海岸(下大津町)-の3カ所で海岸清掃。19日午前9時から、集めたごみでアート作品を作る。

 ◎陽洋トマトベジテールドローンレース大会/25、26日

 25日午前11時、五島市三井楽町の旧浜窄小で開会式。その後、高浜と打折教会前海岸に移動し約1時間、ごみ拾いをする。ドローンのレース大会と展示会は午後1時~3時、同校体育館で開催。午後4時から高浜で、市のドローン事業などについての講演会。展示機体のデモンストレーション飛行もある。

 26日は同市池田町の県立五島高で、講演会とワークショップを開催。ドローン活用策などを話し合う。

跳び箱やフラフープなどを使って試作したコースで、ドローンのテスト飛行をする福嶋さん(左)と中村さん=五島市三井楽町、旧浜窄小

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