川崎簡宿火災から4年 半数廃業も 高齢、長期利用者多く

火災で焼け落ち、フェンスで囲まれた簡易宿泊所=2015年6月、川崎市川崎区日進町

 11人が亡くなった川崎市川崎区日進町の簡易宿泊所(簡宿)火災は、17日で発生から4年となる。市は、市内で営業していた簡宿の火災後の状況を取りまとめて公表。2018年度の1年間で新たに9棟が廃業し、火災発生時49棟あった簡宿は26棟にまで減少したことが明らかになった。

 火元の簡宿は2階建ての届け出にもかかわらず、建築基準法の耐火基準を満たさないまま、2階上部に宿泊スペースを設けて「3階建て」として営業していた。犠牲者や負傷者の大半が上層階に集中したことから、市は3階建ての形態で営まれていた35棟に3階以上の使用停止を求めた。

 市によると、発生直後の立ち入り検査で、35棟のうち24棟が火元の簡宿と同様に耐火基準を満たしていないことが判明。是正や指導を強化した結果、大規模な改修費用を捻出できない簡宿を中心に廃業に追い込まれていったとみられる。経営者の高齢化も廃業が相次いだ一因という。

 現在も営業を続ける簡宿については、建築基準法や消防法、旅館業法の違反で4棟の是正が18年度末時点で未完了という。市は「時間は掛かっているが少しずつ改善されている。引き続きゼロを目指していく」と話している。

 一方、市は火災後に簡宿の利用者に対する自立支援も強化。18年度は新たに47人が民間賃貸住宅などに移り、市の支援策を活用して簡宿を離れた人はこの4年間で計461人となった。利用者のうち生活保護を受給する人も、発生直後の1349人から429人に激減した。

 ただ、65歳以上の高齢者が暮らす割合は約76%で高止まりしており、8割近くが5年以上居住するなど課題も少なくない。市の担当者は「今も声掛けは継続しているが、年齢的にも転居が難しいという人も多い。無理強いせず、利用者の意見を尊重しながら対応していきたい」としている。

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