5月18日(土)東京六大学春季リーグ戦 明大1回戦 @明治神宮球場
主将・郡司の待望の今季初本塁打が飛び出した。
同率で首位に立つ慶大と明大が対峙した明治神宮球場。お互いの意地がぶつかり合った大事なカード初戦は明大に軍配が上がった。慶大は髙橋佑樹(環4・川越東)が初回に2点を失う苦しい展開。打線も明大エース・森下の前になかなか得点を奪うことができない。7回には追加点を奪われ、完全に明大ペースで試合が進むかに思われた。しかし、その裏に下山悠介(商1・慶應)の適時打、8回には郡司裕也(環4・仙台育英)の待望の第1号ソロ本塁打などで反撃を開始し、9回にも大きなチャンスを作る。しかし、明大エースが立ちふさがり、力及ばず。2対5で悔しい敗戦となった。
1 2 3 4 5 6 7 8 9 計 明大 2 0 3 0 0 0 2 0 1 5 慶大 0 0 0 0 0 0 1 1 0 2
明大バッテリー:○森下ー西野
慶大バッテリー:●髙橋佑、津留﨑、増居ー郡司
慶大本塁打:郡司第1号ソロ(8回)
ポジション 選手名(学部学年・出身高校) 1 [5] 柳町達(商4・慶應) 2 [8] 渡部遼人(環2・桐光学園) H 若林将平(環2・履正社) 1 増居翔太(総1・彦根東) H 山崎 隼人(商4・慶應) 3 [9] 中村健人(環4・中京大中京) 4 [2] 郡司裕也(環4・仙台育英) 5 [ 7 ] 正木智也(政2・慶應) 7 橋本典之(環2・出雲) 6 [3] 嶋田翔(環3・樹徳) 7 [4] 小原和樹(環4・盛岡三) H 田中凌馬(商4・長崎東) 8 [6] 瀬戸西純(政3・慶應) H 福井章吾(環2・大阪桐蔭) 8 水久保佳幸(総3・慶應) 9 [1] 髙橋佑樹(環4・川越東) 1 津留﨑大成(商4・慶應) H 6 下山悠介(商1・慶應)
この日も慶大先発髙橋佑は立ち上がりに苦戦する。1、2番に連続で安打を許し、いきなり二、三塁のピンチを招く。3番・内山を逃三振に打ち取るが、続く4番・北本に三塁手のグラブの横を抜ける痛烈な適時二塁打で試合開始早々に2点を失う。
序盤から漂う嫌な流れを断ち切りたい慶大は、初回、リーグ戦通算100安打まで残り1本としている柳町達(商4・慶應)が慶大スタンドからの期待を背に打席に向かう。しかし、その前に明大エース・森下が立ちふさがった。力強い直球を中心に押し込み、最後は変化球に泳がされ左飛に倒れる。それでも、2死から3番・中村健人(環4・中京大中京)が安打で出塁し、暴投で二塁に進塁すると、打席には4番・郡司。しかし、ここは空振り三振に倒れ、得点には至らなかった。
2回以降は髙橋佑も本来の調子を取り戻し、テンポの良い投球でチームに良い流れを作る。6回には安打と野選で1死一、二塁のピンチを招く。しかし、7番・森下が放ったライトへの大きなフライに二塁走者が飛び出したところを右翼手・中村が好返球。バックも髙橋佑を盛り立てる。
髙橋佑は課題の立ち上がりにつけ込まれた。
すると、その裏、先頭の渡部遼人(環2・桐光学園)が内野安打で出塁し、2球目にすかさず盗塁を成功。足でチャンスを演出する。ここで迎えるは、慶大が誇る強力なクリーンナップ。今日最初の大きなチャンスに得点の期待も高まる。しかし、森下はこのピンチにさらにもう一つギアを上げた。3番・中村は投ゴロ、4番・郡司も遊ゴロに倒れる。2死となり、打席には正木智也(政2・慶應)。森下のこの日最速151キロの直球を振りぬくも打球は三ゴロとなり、この回も得点には至らなかった。森下の圧巻の投球の前に、なかなか得点が奪えない苦しい展開が続く。
そして、7回を迎えここまで粘りの投球をしていた髙橋佑が崩れる。先頭打者に右中間を破る二塁打で出塁を許すと、犠打で1死三塁のピンチを招く。踏ん張りたい髙橋佑だったが、3番に犠飛、4番に適時二塁打を浴び、2点を失う。なお、2死二塁とピンチが続いたところで、大久保監督は投手を津留﨑大成(商4・慶應)へとスイッチ。何とか、このピンチを二ゴロで打ち取り、残る攻撃に望みをつなげる。
反撃したい慶大はその裏、先頭の嶋田翔(環3・樹徳)がレフトの頭を超えるフェンス直撃の二塁打で出塁する。三塁へとランナーを進め、大久保監督は打席にルーキーの下山を送る。「自分のスイングをすることを心がけて」と臨んだ打席は待望のチーム初得点となるレフトへの適時二塁打。さらに、8回には郡司に今季第1号となるソロ本塁打が飛び出し、点差をジワリジワリと詰める。
フェンス直撃の二塁打で流れを作った嶋田
しかし、3番手として8回から登板した増居翔太(総1・彦根東)が9回に適時三塁打を浴び、重い1点を失う。明大打線の好機を逃さない攻撃の前になかなか自分たちの流れを呼び込めない。
嶋田に続き二塁打を放ったルーキー・下山。今後に期待だ。
それでも、慶大はあきらめなかった。9回裏、あとがない最後の攻撃で先頭の代打・田中凌馬(商4・長崎東)は、「流れを変えるのが僕の仕事、4年生の仕事」と語るように、流れを変える粘りを見せ、四球を選ぶ。続く水久保佳幸(総3・慶應)がバットを折りながらもレフト前にボールを運ぶリーグ戦初安打で無死一、二塁のチャンスを作る。1死となって打席に入るのは、今日ここまで安打がない柳町。100本目をこの場面で決めるのか。応援席の期待も大きく膨れ上がる。4球目、柳町の放った打球はヒット性の打球となるが、センターの正面を突く。2死となるがチャンスは続き、大久保監督は約2年ぶりのリーグ戦出場となる山崎隼人(商4・慶應)を打席に送る。初球を振りぬいた打球はライトの後方へ。抜けるかと思われた打球は深めに守っていた右翼手のグラブに収まりゲームセット。2対5で悔しい敗戦となった。
試合後、大久保監督は開口一番、「残念、悔しい、もったいない」と今日の試合を振り返った。確かに、あと一つ粘り切れていたら、展開は変わっていたのかもしれない。しかし、それを許さなかった明大・森下の投球に加え、チャンスを確実にものにした明大打線が今日は一枚上手だった。100安打へあと1本としていた柳町も森下の前に、安打を放つことができず、100安打は明日へお預けだ。
しかし、最後に慶大が見せた攻撃は明日へつながるものだったのではないか。田中凌の執念の粘り、そして約2年ぶりの出場であった山崎の抜けようかという大きな右飛。まさに、4年生の力がチームに明日への活力を与えた。優勝へ絶対に落とせない天王山第2ラウンドはさらなる激戦が予想される。幾多の逆境を跳ね返してきた慶大ならば、大丈夫だ。やはり、リーグ優勝への道は楽なものではない。慶大はいばらの道を突き進め。
(記事:菊池輝 写真:川下侑美、澤田夏美)
◆打撃成績
1 2 3 4 5 6 7 8 9 1 [5] 柳町 左飛 空三振 投ゴロ 四球 中飛 2 [8] 渡部遼 一ゴロ 逃三振 二安 H 若林 空三振 1 増居 H 山﨑 右飛 3 [9] 中村 中安 空三振 投ゴロ 逃三振 4 [2] 郡司 空三振 中安 遊ゴロ 左本① 5 [7] 正木 右飛 四球 三ゴロ 一ゴロ 7 橋本典 6 [3] 嶋田 逃三振 遊ゴロ 左2 空三振 7 [4] 小原 三ゴロ 空三振 中飛 H 田中凌 四球 8 [6] 瀬戸西 左飛 一ゴロ H 福井 右飛 8 水久保 左安 9 [1] 髙橋佑 左飛 右安 1 津留﨑 H6 下山 左2① 遊飛
◆投手成績
投球回数 打者数 球数 安打 三振 四死球 失点 自責 髙橋佑 6 2/3 30 87 7 2 4 4 4 津留﨑 1/3 1 3 0 0 0 0 0 増居 2 10 40 2 0 2 1 1
◆監督・選手コメント
大久保秀昭監督
――今日の試合を振り返って
残念、悔しい、もったいないです。
――もったいないというのは
3点目、4点目を与えてしまったところで粘りたかったですし、中盤以降2点差で行きたかったところを4点差にしてしまって。1点差に詰めよりましたけどね。ドラフト上位候補の投手に対して3点、4点をひっくり返すのは大変。それでも、後半追い詰めたのは明日に繋げられるかなと思います。
――マウンドに向かうシーンも多かったですが、どのような声をかけましたか
その時できる最低限のことをやりなさいということと、あとは激励です。
――適時打を放った下山選手については
1年生なんだから思いっきりやってくれれば良いんですよ。4年生に期待する部分が大きくて、そういうのを出せている選手もいますし。今のメンバーは野球の怖さとか、勝つことの難しさとか、アウト取ることの大変さとかを知っているがゆえに、慎重になっている部分もある。でも、それってすごい強みなんです。もちろん10勝0敗が理想ですけど、勝ったり負けたりしながら優勝争いに食らいつくだけです。
――最終回に田中凌選手が粘って四球を選びましたね
出場したところで最高の仕事をしてくれたら良いかなと思います。
――明日も負けられない試合となります。明日に向けて意気込みをお願いします
一生懸命練習をして、準備をして、攻略しようとやっていますけど、やはり簡単ではないです。これはお互い様で、そのような試合ばかりで、勝つのは大変。でもそれを乗り越えないと良い思いはできないです。
郡司裕也主将(環4・仙台育英)
――今日の試合を振り返って
相手の先発の森下がすごく状態が良かったです。チャンスは何回もあって、こっちはチャンスをとれませんでしたが、相手はチャンスで打っているという感じだったので、そこの差に負けたかなという感じです。
――どのような準備を今日までしてきましたか
森下を打たないと始まらないと考えていました。対策はいろいろしてきたつもりでしたが、対策だけでは何ともならない部分もありました。3戦目、またいけるように、明日勝ちたいです。
――先発の髙橋佑投手はどうでしたか
立ち上がりが毎回の課題なので、アンラッキーなヒットもあったと思いますが、特別悪いわけではないので、次にまた期待したいと思います。
――ホームランを打ちました
久々のホームランだったので、気持ちよかったです。
――最後反撃しきれませんでした
点は取れませんでしたが、ランナーを出して相手にプレッシャーを与えることが出来たので、そこは明日に繋がると思います。
――明日に向けて、意気込みをお願いします
慶應は背水の陣くらいがちょうどいいと思うので、逆境に強く、何としても勝ちたいと思います。
田中凌馬(商4・長崎東)
――今日の試合を振り返って
序盤から結構厳しい展開で、これはやっぱりどこかで流れを変える選手がいないといけないなと思ってました。まあキツい展開だったんですけど、ベンチは集中力を切らさずに変わるメンバーもいい準備が出来たかなと思います。
――9回の打席、どのような気持ちで入りましたか
流れを変えるのが僕の仕事、4年生の仕事だと思うので、そこで出塁して上位に繋いでやろうというつもりで打席に入りました。
――9球粘っての四球という結果はどうですか
結果的にベストというか、出塁することが一番だったので、そこは良かったかなと思います。
――優勝に関わる明日の試合に向けての意気込みを
やっぱり流れを変えないといけない場面で僕の出番があると思うので、そこでしっかり一打出すというのと、あとやっぱり野球を楽しんでやれたらいいかなと思います。
山崎隼人(商4・慶應)
――まずは今日の試合の振り返りをお願いします
そうですね、やっぱり惜しい場面は何度もあったと思うんですけど、そこであと一本をうちが出せなくて相手が出したというところで、本当にもう一本の最後の詰めのところで競り負けたなという感じがします。
――ご自身としては久しぶりの打席だったと思いますが、どのような気持ちで臨みましたか
監督にも本当に人生かけて振ってこいという風に打席に入る前に言われたのもあったので、自分でももちろんそう思っていましたし、本当にこの一打席に全部かけてもいいというくらいの気持ちで臨みました。
――初球に狙いを澄ましたナイスバッティングだったと思います
ありがとうございます。でもやはりそれをヒットにしないと意味はないし、それで勝たないと全部意味はないので、本当に次もし回って来るのなら、また人生かけてもう一回振りたいと思います。
――最後に、ラストシーズンの意気込みを教えてください
本当にチーム一丸となってやれていて、僕以外の4年生とかがサポートしてくれているところもあるし、下級生も本当に頑張ってくれてるというのがすごいあるので、試合に出る以上、そういうものを全部背負って、一打席一層一つの守備に全部かけてプレーしたいと思います。
水久保佳幸(総3・慶應)
――今日の試合を振り返って
最近先制されていたので、今日は全員で先制するぞという気持ちで入ったんですけど、やはり先制されてしまいました。いつも通り粘って、我慢して戦おうと言っていましたけど、今日は相手が打つとこで打って、こちらが打てなかったです。明日はこっちが打つとこで打って勝ち点を取れるように頑張りたいと思います。
――どのようなことを考えて打席に立ちましたか
最終回だったので、前の(田中)凌馬さんが気持ちで勝ち取った四球をなんとか繋げるように初球から積極的に打ちに行こうと思い打席に立ちました。バットを折ってしまいましたが、なんとか繋げたので良かったです。
――守備固めでの出場が多いですが、心がけていることはありますか
センターの渡部遼人が上手いので、それに負けないようにいつも練習しているので、その練習の成果を出せるように。あと、サポートしてくれているメンバーもいるので、練習の成果を出せるように一歩目を意識してやっています。
――1戦目、落としてしまいましたがチームの雰囲気は
落としてしまったんですけど、全然落ち込むことはなく、リーグ戦はそんなうまくいかないと思うので。みんなそういう気持ちだと思います。
――明日に向けて一言お願いします
先程も言いましたが、そんな上手くいかないと思うので、絶対勝てるように頑張りたいと思います。
下山悠介(商1・慶應)
――リーグ戦初タイムリーを打った率直な気持ちは
理想的なスイングで良い当たりを打てたので素直に嬉しいです。
――チームが苦しい展開のなか、リーグ屈指の好投手である森下投手を相手にしてチャンスの場面での代打、どんな気持ちで打席に入りましたか
準備は出来ていたので、後ろの柳町さんに繋ぐことを意識しながら、自分のスイングをすることを心がけて打席に入りました。
――代打に向けての準備で意識していることはありますか
試合で自信を持って打席に入れるように、前日、前々日から実戦を意識して練習に集中して取り組んでいます。
――ショートの守備についた感想は
守備に得意意識はないのでプレッシャーを感じながらプレーをしました。
――明日以降の明治戦に向けての意気込みを聞かせてください
初戦は落としてしまいましたが明日、明後日勝てば問題ないと言われているので、それを実現できるようにしっかり明日以降に向けて準備したいと思います。