「お前はプロ野球をなめている」ヤクルト梅野に突き刺さった指揮官のゲキ

ヤクルト・梅野雄吾【写真:荒川祐史】

守護神・石山に代わり、クローザーを任されるようになった3年目の梅野

 5月17日のこと。約1週間ぶりに神宮球場へ戻ってきたヤクルトで、私がどうしても話を聞きたかった選手がいた。3年目の右腕・梅野雄吾投手だ。

 梅野投手は石山投手の戦線離脱で、5月6日の阪神戦から代役ストッパーを務め、現在3セーブを挙げている。代役初登板の翌7日、ヤクルト・小川監督が「梅野投手は、這い上がる強さを持っている」「野球が上手くなりたいという気持ちを強く感じる」と力強く話していたのが印象的だったからだ。

 それに5月15日の敵地・広島戦で9回に4失点し、同点に追いつかれ、サヨナラ負けのきっかけを作ってしまった。テレビで見ていた私は、あの4失点は梅野投手にとって、今後のスワローズを支える上で“必要な経験”だったのではないかと思っていた。

 練習に向かうため、クラブハウスから出てきた梅野投手を待った。

「切り替えて、同じ失敗は繰り返さないようにしないといけませんね」

 反省しつつも、その口調と表情からは清々しさを感じた。

 小川監督が先日、話していたことを伝えると

「負けず嫌いなんで!」

 と返ってきた。プロはみんなそうだが、相当な悔しさが梅野の今を支えていた。

 昨年5月、1軍で結果を残せず、梅野は出場選手登録を抹消された。その時小川監督に厳しい言葉をかけられている。

「今のお前じゃ使えない。今の段階で自信があるだろうけど、お前の自信はプロ野球では通用しない。練習態度、雰囲気、プロ野球をなめている」

 プロ野球をなめている――。

 ファームに落とされた梅野を高津2軍監督は抑えで使い、梅野は自ら成績を残し再び1軍へ上がってきた。

 上がってきた時、小川監督は、負けず嫌いな性格を分かった上で梅野にこう言葉をかけた。

「今回は自分で実際に成績を出して上がってきたんだから、自信を持って投げろ」

 「ファームに落ちる時、厳しいことを言って、その時のお前がどう感じたかはわからないけれど、ちゃんと自分の力で上がってきた。これまでは期待感だけで1軍にいたけど、今回は自分で実際に成績を出して上がってきたんだから、自信を持って投げろ。ただ、いくら成績を出しても天狗にはなるな。謙虚さを忘れるな。そういう空気が見えたらいつでも言うぞ」

 当時を振り返り「ボロクソ言われたから、やり返すぞと言う気持ちになります」と梅野投手は話す。

 負けん気の強い梅野投手の中で、「やり返した」のはこれまでの自分自身に対してと言う部分が大きかったのだろう。

 その時の経験と監督からの言葉は今に活かされ、失敗も糧にして成長を続けている。

 石井弘寿投手コーチも梅野の変化を感じている。

「石山が抹消され、抑えを任されるようになってから、ミーティングなどで、よりしっかり映像を見たり、より真剣に向き合うようになっていますよ」

 広島戦では打たれたが、今のリリーフ陣の中では「球の威力はやはり1番素晴らしい」「だからこそあの位置を任せている」と石井(弘)コーチは言う。

 入団当初から先発をやりたいという若い選手が多い中、梅野投手は「抑えを取りたい」と言っていた。その思いが、本人の努力と共に実現している。

 小川監督は梅野の負けん気の強さを知っている。だから抑えを任せている。広島戦では押し出し四球など失点したが、きっと超えなくてはいけない壁だと首脳陣は使い続けるだろう。

 梅野は技術面を含め、さらなる成長のため「僕は強くなります!」力強く宣言し、投手の練習する室内練習場へと力強く入っていった。(新保友映 / Tomoe Shimbo)

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