「丹沢の安心支えたい」 秦野で初の女性山岳救助隊員

秦野市で女性初の山岳救助隊員となった土方さん=同市消防署

 秦野市消防山岳救助隊に初の女性隊員が誕生した。この春、隊に名を連ねたのは、同市出身の土方(ひじかた)ありささん(27)。消防本部では女性の活躍の場が広がることなどを期待しており、土方さんは「今後、女性が山岳救助隊員をやれるかの基準に自分がなると思うが、プレッシャーに感じず、最大限の力を発揮したい」と意気込んでいる。

 土方さんは、2016年に市消防職員として採用された。「火消しになりたくて。最前線に立ちたい気持ちが強かった」。市消防署に勤務し、現在は消火活動などにあたる毎日だ。

 実は、山岳救助隊員の指定を受けないかとの打診は以前にも受けていたが、自分の体力を不安視して1度辞退していた。

 「女性ができるのかなっていう疑問もあって」と土方さん。ただ山の近くで育ち「登山のイベントとか、父親が山好きっていうこともあって身近な存在」と山には愛着がある。中学、高校、大学では、やり投げなど陸上の投てき種目で鳴らしてきた。

 「山岳救助にあたれるのであればやってみたい」。志を秘めながら、体づくりと知識習得に向けたトレーニングをスタート。富士山や地元の丹沢、大山などに登る機会を増やしたほか、ウエートトレーニングなどを1年間積み重ね、今度は自ら志願したという。

 山岳救助隊に女性が入隊するのは、2003年4月の発足以来初めて。2人一組で活動し、ロープや救急資器材などの重量は約10キロにもなる。さらに険しい山道を登り、負傷者の応急処置をした上で、背負うか担架に載せて救助するのが仕事だ。

 隊員は現在20人。それぞれの持ち場で働きつつ、いざというときに備えるが、土方さんは今後、道具の使い方や救助技術を習得する訓練を積む。「身長が156センチでそんなに高くなく、女性ということで心配されることもあると思う。それを払拭(ふっしょく)できるよう、活動していきたい」と前を向く。

 市消防本部によると、市消防署と、市内の4分署に詰める消防隊員計72人のうち、女性は土方さんを含めて2人だけ。三代茂一署長は「全国的に女性の登用率が低い中、道を開くためにも頑張ってもらいたい」と期待し、「体力は男性署員に勝るとも劣らない」と太鼓判を押す。

 地元には登山シーズンが到来。土方さんは「観光客に丹沢良かったね、安心して登れるね、という気持ちになっていただけたら」と抱負を語り、助言も忘れない。「朝、登る前に体調を確認してほしい。少しでも体調が優れない時は登らないのが一番。登山届も提出していただければ、自身のためになる」

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