今回は、世論調査における「無党派層」に注目します。
多くの世論調査で登場する「無党派層」とは何でしょうか。簡単に言えば、選挙における有権者のうち、支持政党を持たない層のことを指します。「政党支持無し層」とも言います。
この「無党派層」は、各社の世論調査では以下のように表現されています。
共同通信「支持する政党はない」
時事通信「支持政党なし」
読売新聞「支持する政党はない」
朝日新聞「支持する政党はない」
毎日新聞「支持政党はない」
日本経済新聞・テレビ東京「支持・好意政党なし」
産経新聞・フジテレビ「支持する政党はない」
NHK「特に支持している政党はない」
JNN(TBSテレビ)「支持する政党はない」
ANN(テレビ朝日)「支持なし、わからない、答えない」
支持政党がないって、支持したい政党がない? or 興味がない?
上記を見ると、概ねニュアンスとしては統一されていますが、日本経済新聞・テレビ東京の「好意」という形容や、ANNの「わからない、答えない」という表現が含まれています。このことから「無党派層」とは、そもそも政治に何の関心もない層なのか、政治への関心はあるが、支持できる政党がないため意志的に「無党派」を選んでいるのか、なかなか簡単に内訳を判断できるものではありません。
堀江湛 編『政治学・行政学の基礎知識 第2版』(一藝社、2007年、142頁)には、初期の分析において、「無党派層」は政治的関心が薄く、選挙に行くこともほとんどない層とされていたものの、その後の分析においては、政治的関心が高く、選挙も毎回足を運ぶ有権者が含まれる割合も少なくないことがわかってきたとあります。
では、世論調査において「無党派層」は、どのくらいの割合を占めているのでしょうか。
昨年2018年11月~今年2019年4月の半年間のスパンで見てみましょう。
※ここでの「無党派層」は各調査において「支持政党なし」、そうした選択肢がない場合は、「答えない、わからない」に類する選択肢を選んだ層を対象としています。
共同通信
2018年11月 30.2%
2018年12月 36.1%
2019年1月 43.5%
2019年2月 35.3%
2019年3月 35.2%
2019年4月 33.9%
時事通信
2018年11月 58.3%
2018年12月 65.1%
2019年1月 60.0%
2019年2月 61.5%
2019年3月 60.7%
2019年4月 58.5%
読売新聞
2018年11月 42.0%
2018年12月 46.0%
2019年1月 45.0%
2019年2月 47.0%
2019年3月 44.0%
2019年4月 42.0%
朝日新聞
2018年11月 41.0%
2018年12月 41.0%
2019年1月 38.0%
2019年2月 41.0%
2019年3月 41.0%
2019年4月 38.0%
毎日新聞
2018年11月 41.0%
2018年12月 43.0%
2019年1月
2019年2月 42.0%
2019年3月 39.0%
2019年4月 42.0%
日本経済新聞・テレビ東京
2018年11月 38.0%
2018年12月 37.0%
2019年1月 33.0%
2019年2月 33.0%
2019年3月 34.0%
2019年4月
産経新聞・フジテレビ
2018年11月 35.3%
2018年12月 34.4%
2019年1月 35.4%
2019年2月 39.3%
2019年3月 40.8%
2019年4月 33.4%
NHK
2018年11月 40.7%
2018年12月 41.1%
2019年1月 42.5%
2019年2月 41.5%
2019年3月 40.6%
2019年4月 40.7%
JNN(TBSテレビ)
2018年11月 44.0%
2018年12月 41.4%
2019年1月 43.5%
2019年2月 37.0%
2019年3月 40.0%
2019年4月 39.6%
ANN(テレビ朝日)
2018年11月 30.4%
2018年12月 30.1%
2019年1月 35.2%
2019年2月 32.6%
2019年3月 30.0%
2019年4月 30.8%
時事通信を除き、おおむね「無党派層」が3~4割を占める結果となりました。加重平均は以下のようになります。
2018年11月 40.51%
2018年12月 41.84%
2019年1月 41.95%
2019年2月 41.30%
2019年3月 40.96%
2019年4月 40.10%
与党である自民党の支持率は、この半年での加重平均を見ると、現状においては4割弱で推移しているため、基本的に「無党派層」は与党である自民党を上回っています。
無党派層が増えた背景とは
1960年代、日本での無党派層は有権者の1割程度で、1990年代以降に急増しています。背景としては、国際的な冷戦の終結、また1993年の55年体制の崩壊に端を発する、政党の分裂化・多様化なども挙げられますが、相次ぐ政治家の汚職や失言などから政治不信、また政治への関心が低下したことも指摘できます。
ただ実際には、無党派層が単に政治に興味・関心がないのか、選択的に「無党派」であるのかは、簡単にはわかりません。現状、自民党の支持率は野党を大きく引き離していますが、与党を上回る割合を占める「無党派層」からの票が得られなくなれば選挙での勝利は危うくなります。逆に言えば、無党派層を巻き込むことによって、選挙での大勝が期待できます(2005年、小泉政権下における自民党の衆議院選挙の大勝は、無党派層をうまく巻き込んだ例と考えられています)。それは立憲民主党をはじめとする、野党にとっても同じこと。上記のデータからわかるように、特にその割合が高まっている近年、「無党派層」は選挙を握る大きな鍵であると言えるでしょう。