差別根絶条例に市民団体が意見書 実効性確保へ刑事罰求め

意見書に込めた思いを伝える市民ネットワークのメンバーら=川崎市川崎区

 川崎市が成立を目指している差別根絶条例について、市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」は10項目にわたる意見書をまとめ、22日、市に提出した。実効性を確保するため、差別の禁止条項や刑事罰を含む制裁規定を盛り込むことを求めている。

 市が3月に公表した条例概要では、外国人や障害者、性的少数者らに対する、あらゆる差別の禁止を基本理念としている。へイト団体による街宣やインターネット上の人権侵害がやまない実態を踏まえ、ヘイトスピーチに対して罰則を設けるか否かを慎重に検討している。

 意見書は昨年3月にも市と議会に届けているが、条例の素案が示される6月議会を前に、強調したい10項目を補足した上で改めて提出した。

 「差別のない、人権が尊重される川崎を市民参加でつくっていきたい」と三浦知人事務局長。在日コリアン3世の崔(チェ)江以子(カンイヂャ)さんは「市民の願いは一つ。本気で差別を禁止し終わらせる、実効性のある条例だ。全国の範となり、希望になる。市民と議会、行政が一体となったオール川崎の歩みを臆することなく進めてほしい」と求めた。

 面会した向坂光浩市民局長は「いま行われていることがどうやったらなくなるか、外部から共生を邪魔しに来る人にどう対抗するか、意見を参考にしながら積極的に取り組んでいく」と応じた。

 10項目の意見は次の通り。

 (1)川崎市の多文化共生政策の経緯や国際人権諸条約とヘイトスピーチ解消法の理念を踏まえることを前文に明記すること。

 (2)差別の定義に差別的取り扱いだけでなく差別的言動も含むこと。

 (3)包括的な差別禁止と人権尊重に加え、ヘイトスピーチを含む人種差別の禁止に実効性を持たせるため、明確で具体的な禁止条項を置くこと。

 (4)ヘイトスピーチを含む人種差別に対して刑事罰を含めた制裁規定を置くこと。

 (5)ネット上のヘイトについて、市民が市に削除要請できる制度やモニタリングなどの対策強化をうたうこと。

 (6)学校教育、社会教育における人権教育の推進を明記すること。

 (7)被害救済のため人権侵害の審査、認定、救済措置を判断する第三者機関を設け、申し立てをしやすくする市民通報制度と各区役所に相談窓口を設置すること。

 (8)市民と築く多文化共生社会の実現を明記すること。

 (9)差別目的の公的施設利用を制限する条項を置き、現行のガイドラインを改正すること。

 (10)ヘイトスピーチや差別事例を調査、情報収集し、差別撤廃に向けた行動計画を策定すること。

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