「まるで強盗」「権力の脅しには屈しない」 反対地権者 不信感募らせる

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県道付け替え道路の工事現場で抗議の座り込みをする地権者ら=川棚町

 石木ダム建設事業を巡り、長崎県収用委員会が、宅地を含む約12万平方メートルの明け渡しを地権者に求めた裁決。反対地権者13世帯が暮らす宅地の強制的な収用が一層現実味を帯びた。「権力の脅しには屈しない」。住民らは古里を守る決意を口にし、行政側にいら立ちと不信感を募らせた。

 建設予定地では、ダムに水没する県道の付け替え道路の工事を進めたい長崎県側と、連日現場に座り込んで抗議する反対住民らのにらみ合いが続く。22日も住民や支援者らが朝から作業道に座り、長崎県職員らが様子をうかがっていた。

 昼すぎ、“裁決”の情報が現場に伝わると、地権者の岩下和雄さん(72)は「これで県との話し合いの糸口はなくなった」と言い切った。同じく地権者の岩本宏之さん(74)は「売りたくないと言えば、無理やりにでも土地を奪い取る。まるで強盗だ」。かつて収用委員の1人が反対地権者らの抗議活動に「阻止されたらどんどんブルドーザーを突っ込んで」と発言したのを踏まえ「独立機関と言いながらも結局は県の下部組織。そんな収用委の裁決は無効だ」と吐き捨てた。

 地権者の石丸勇さん(70)は自身の農地で田植えの準備をしていた。2015年に農地の一部を収用されたが、変わらず耕作を続ける。「(一部の土地だけ先に収用したのは)住民を分断する意図があったかもしれないが、古里を守る決意が揺らぐことはなかった。今回も変わらないよ」と落ち着いた様子で汗をぬぐった。

 実家の鉄工所で働く住民の松本好央さん(44)は「報道で知った」と少し驚いた表情。まだ小学生だった1982年、長崎県が機動隊を導入した強制測量では大人に交じって抗議に参加した。現在はこの土地で父となり、子どもたちを守る立場。「ここで暮らす人たちを差し置いて大事なことを決めてしまう。一体俺たちって何やろうね」とぽつりとつぶやいた。

 地権者で川棚町議の炭谷猛さん(68)は「県は手続きさえ進めれば、どうにかなると本気で思っているのか」と眉をひそめた。収用に向けた手続きが着々と進む中、反対住民が置き去りにされる状況に危機感を覚え、4月の町議選に初めて立候補。ダム反対を正面から訴え、トップ当選した。「このまま強引に進めれば世論は必ず反発する」と語気を強めた。