石木ダム全用地収容採決 迫る知事判断 地権者引かず

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 今回の裁決で、石木ダム建設事業は大きな局面を迎えた。土地収用法では、明け渡し期限までに地権者が応じなければ、起業者(石木ダムの場合は長崎県と佐世保市)は知事に行政代執行の請求が可能。請求を踏まえ、知事が対応を判断することになる。長崎県は「まずは円満に協力いただきたい」と強調するが、地権者は一歩も引かない構えだ。

 付け替え県道迂回(うかい)路部の用地(約5500平方メートル)は2015年6月に裁決が出て、同8月までに収用されたが、現在も地権者による耕作が続いている。長崎県河川課は「工事の工程上、今すぐ(立ち退かせるなどの)代執行をする必要はない」として説得に当たっている。

 一方、今回裁決が出たダム本体(約3万平方メートル)と貯水池(約9万平方メートル)の用地は家屋13世帯を含むため、交渉はさらに難航必至だ。長崎県が掲げるダムの完成目標年度は2022年度。このまま住民が住み続ければ、中村法道・長崎県知事はいずれ行政代執行の判断を迫られることになる。

 長崎県用地課によると、1998年度から昨年度までに県の事業計81件について、県収用委員会に裁決申請したが、このうち行政代執行に至ったのは2例だけ。1例は立木の伐採で、もう1例は2007年、佐世保市内の県道を整備する際に住居1世帯を立ち退かせたという。いずれにせよ、石木ダムで行政代執行されれば、長崎県にとって前例のない規模となる。

 ダム反対運動に詳しい呉工業高等専門学校(広島県)の木原滋哉教授は「(実際に行政代執行をすれば)聞いたことがない規模。居住者がいていろいろな意見がある中で代執行をすれば反発を招くだけだ」と懸念を示した。