全国の秘宝館の魂を受け継ぐ、ディープな飲み屋が大塚に誕生!|Mr.tsubaking

バブル期に、全国の観光地や温泉地を中心に数多く作られた秘宝館。

現在は斜陽の一途を辿り、数えるほどしか残っていないばかりか、現役の秘宝館もお世辞にも賑わっているとはいえない状況が続いており、絶滅してしまうのもそう遠くないとも言われている。

2019年4月、そんな中で東京の大塚に新たな秘宝館が誕生した。その名も「ニュー秘宝館」。

秘宝館といっても、温泉地や観光地でもない大塚に誕生し、いわゆる「エロ博物館」といった展示品がずらりと並ぶスタイルとは全く違っている。

外観はこんな感じ

陽の高い時間でも怪しさを醸し出す紫のシェード。最新の秘宝館は飲み屋である。

店内へ入ると、その雰囲気にぐっと引き込まれる。まず目を引くのが煌煌と輝く巨大なネオンサイン。

ああ、情緒があります

ここ「ニュー秘宝館」は、閉館する秘宝館から所蔵品を譲り受け、店内の装飾としている。巨大なネオンサインは、日本一の秘宝館との誉れも高かった嬉野観光秘宝館(佐賀県/2014年閉館)の、外にあった看板をもらってきたものだ。

カウンターの背後に掲げられたロゴは北海道秘宝館(2010年閉館)から譲り受けている。ネオンサインの下に描かれた壁の大きなイラストも、北海道秘宝館にあったものを、職人さんに頼んで再現してもらっている。

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温泉好きから秘宝館巡りをするようになったという、店主の片品村蕃登(カタシナムラホト)さんは、数々の遊園地や秘宝館の建築を手がけた東京総研の川島和人社長(故人)とも親交があり、店にもその写真が飾られている。

写真のそばにおかれたリンゴのも、秘宝館からもらったものだそう。一見、芯の部分が女性器を模して描かれているが、よく考えると意味が見えてくる。リンゴという果物は、アダムとイブが食べた禁断の果実とも言われる。つまり性の交わりの寓意になっているのではないだろうか。

トイレです

温泉地などにある秘宝館を、単なる下世話な施設と思われる向きもあるかもしれない。しかし所蔵品の中には、ある地域で御神体として祀られていたものや民間伝承の裏付けとなる道具、さらには北斎直筆とされる春画までが並び、意外にも、民間の習俗や信仰などの異物を補完するタイムカプセルとしての役割を果たす側面もある。

女性器型の戸板の取っ手と男根

つまりここには、ある種文化財とも呼べるような、性モチーフの品々が全国から集められていて、バブル時代に栄華を極めた全国の秘宝館の魂が連綿と受け継がれているのである。そうした品々を眺めながら飲むお酒はまた特別な感覚にさせてくれる。

巨大ネオンサインの下に描かれた壁の絵も、職人さんに依頼して、閉館した北海道秘宝館の写真をもとに描いてもらったもの。とにかく、全国の秘宝館の名残がここに集まってきているのである。この店をはじめる前の10年間、新宿のゴールデン街で働いていたという蕃登さんが出すお酒は、氷も氷屋からきちんと仕入れるこだわりで、美味しい。

バイスサワー

また、ソフトドリンクでは、色とりどりのシロップから作り、アイスクリームをのせたクリームソーダは秘宝館を知らない世代の若い女性にも人気で、私が来店した際も、何組もの若い女性がおとずれていた。

令和の時代に、昭和と平成の魂を燃やし続けるニュー秘宝館、新たなディープスポットとして、さらに人気を集めそうだ。(Mr.tsubaking連載 『どうした!?ウォーカー』 第34回)

■ニュー秘宝館
豊島区北大塚3丁目33−2ヤマトビル
15:00〜0:00
日曜定休

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