元G助っ人が営むアカデミー 徹底した球数管理、日本と異なる育成方針「25歳でベストに」

アジアンブリーズとゴンザレスアカデミーの選手による集合写真【写真提供:色川冬馬】

2月に米国を巡った「アジアンブリーズ」が元巨人エドガー・ゴンザレス氏のアカデミーを訪問

 2月から約1ヶ月にかけて試合をしながら、米国を巡ったトラベリングチーム「アジアンブリーズ」。約1ヶ月の間、ドジャースやレンジャーズといったMLB球団のマイナーチームをはじめ、メキシカンリーグのチームと対戦を重ねていった。その道中、チームに思いがけない機会が訪れた。それはメキシコ最大のゴンザレスアカデミーへの訪問。そこは巨人でもプレーし、メキシコ代表監督も務めたエドガー・ゴンザレス氏がオーナーを務める場所だった。

 なぜ突然、同アカデミーへの訪問が決まったのか。アジアンブリーズの色川冬馬氏によると「当初予定していた試合が、先方の勘違いで中止になってしまいました。ちょうどサンディエゴにいたので、知人を介してエドガー・ゴンザレスに連絡したのです」と振り返る。色川氏は選手としてメキシコでプレーした経験もあり同国の人脈も豊富。エドガー氏のアカデミーに知人が在籍していた縁もあり急遽、トップチームとの試合も行われた。

 さて今回、アジアンブリーズが訪れたこのアカデミーはどのように仕組みになっているのだろうか。

 一般的に中南米の野球アカデミーは、選手をMLB球団に送り出し、選手の契約金のマージンで運営が支えられている。エドガー氏のアカデミーにはメキシコ全土から集まった14歳から16歳までの選手たちが在籍している。

ゴンザレスアカデミーの施設【写真提供:色川冬馬】

寮や食事などの環境が整えられている一方で、16歳までに契約できなければ帰される

 アカデミーは選手をプロの舞台で活躍させることが1つの目的だ。日本における中高生の年代にあたる選手であるが、日本と同世代の育成としては少し目的と方法が異なる。例えば試合であっても、投手の1日に試合やブルペンで投げる球数は管理され、選手の投げ過ぎを防いでいる。

 この取り組みを行う意図について、色川氏は「アカデミーでは選手が25歳でベストの選手になるように育成が行われています。そこに向けて逆算して指導をしているので、この日は各投手25球で代わっていました。ワンプレーごとの勝負は真剣ですが、チームの勝利が優先か? と言われればそれだけではないのです」と説明する。

 また、選手がプレーに集中できるように寮や食堂、トレーニング室などが完備されており、野球選手になるための環境が整えられている。その反面、16歳までにMLB球団と契約できなければ、帰宅しなければならないという厳しい現状もある。

 日々が競争と言える環境に色川氏は「選手は良い環境下でプレッシャーがかかっているので、やるべきことをやるのは当たり前。アカデミーから契約していく選手もいるので刺激的な場所ですよね」と話す。突然の訪問となったアジアンブリーズだったが、プロ契約に向けて大きな刺激を受けたことだろう。そして、待ち受けるプロ球団との試合に臨むのだった。(豊川遼 / Ryo Toyokawa)

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