枠を外して“ワクワク”しよう 障害者スポーツ普及へ絵本

スポーツを通じた共生社会の実現に向け、川崎市が制作した絵本。相手のことを知り、枠をなくそうと呼び掛ける(川崎市提供)

 障害者スポーツの普及を図ろうと、川崎市が子ども向けの絵本「ワクワクのつくりかた」を制作した。主人公の少年が、障害のある同世代の友人との交流を通じて固定観念を取り払い、新たな気付きに心を躍らせる物語だ。障害の有無などにとらわれることなく共にスポーツを楽しみ、共生社会の実現につなげる狙いがあり、既に全市立小学校に配布。授業などで活用してもらう。

 主人公は「そら」という男の子。停電時、目が見えない友だちの「ひろ君」に助けてもらったり、車いすに乗った「りく君」とボール遊びをする際、投げるのではなく転がすと楽しいことを発見したりするストーリーになっている。

 人間にはそれぞれできることとできないことがあるが、一緒に工夫して取り組めば楽しめることがあるとそら君は気付く。とらわれていた「枠(ワク)」を外し、「ワクワク」を増やす機会を生み出すそら君のような存在を、絵本では「オープンエアメーカー」と名付け、「ワクワク」を作るための三つのヒントも掲載。考え方次第で誰もが共にスポーツに熱中できる環境をつくり出せることを、子どもたちに分かりやすく伝えている。

 市によると、絵本は、2018年2月にスポーツ庁が公募した「障害者スポーツ推進プロジェクト」の一環として制作された。実行委員会に加わったNPO法人高津総合型スポーツクラブ「SELF」(高津区)を中心に、市障害者スポーツ協会、同指導者協会、市スポーツ協会のメンバーらが携わった。

 小学3~4年生に授業などで活用してもらうことを想定。市内の小学校3年生にプロジェクターで原案を見せた上で、目隠しをした児童とのボール遊びやフラフープなどを体験してもらい、その時の児童の反応も作品に反映させたという。

 市は本年度中に順次、市内の公立中高、特別支援学校にも配布する予定。市市民スポーツ室の担当者は「市のホームページでも絵本のデータを掲載しているので、ぜひ多くの人に見てもらいたい」と話している。

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