【1年で今だけ!】 本州に2箇所しか咲かない貴重な高山植物って知ってる? 新緑が輝き始め、次々と花が咲き始める春から初夏、高山帯でも貴重な高山植物が徐々に芽吹き始めます。 その中でも、本州ではわずか2箇所しか咲かない貴重な高山植物があるのを知っていますか? それは『ツクモグサ』というフワフワのうぶ毛が可愛い高山植物です。 今回はそんな可愛いツクモグサをご紹介します!

山を彩る美しい高山植物は、登山の醍醐味の1つ!

みなさまは高山植物は好きですか? 森林限界より上の高山帯に自生する高山特有の植物ですが、 初夏~盛夏にかけてアルプスなどの高山の山肌を彩り、ハイカーの疲れと心を癒してくれます。 山と高原地図でも「お花畑」の記述やマークがある箇所は、目を見張るほどの花々が咲き乱れまさに百花繚乱の様相を呈しています。

本州では2箇所だけ!貴重な高山植物 「ツクモグサ」

山域によって自生する植物の種類に傾向はありますが、その中でも特に珍しく、本州ではわずか2箇所にしか自生しない高山植物をご存知ですか? それは「ツクモグサ」です。 開花時期は年によって多少のズレはありますが、およそ5月下旬から咲き始め、6月初旬~中旬頃に見頃を迎えます。
※2019年5月27日現在、急激な気温上昇で一気に開花が進み、満開の見頃を迎えています。

日本固有の高山植物で絶滅危惧種に位置付けられており、数百個体が現存するのみと推定されている大変貴重な植物です。 本州以外では北海道の山岳地帯に自生していますが、本州に咲く2箇所とはいったいどこなのでしょう?

ツクモグサが見られるのはここ!その① 「白馬岳」

まずは「白馬大雪渓」で有名な白馬岳です!
大雪渓側から登ると、頂上にもっとも近い「白馬山荘」手前から山頂に掛けて、ツクモグサが至る所に咲き乱れています。

意外と小さくて見落とす可能性も!?

ただし、ツクモグサの花弁外輪は3~4cmほどと小さく背も低いため、目を凝らして「ツクモグサを見付けよう!」と探さなければ、気付かず通り過ぎてしまうことが多いので注意が必要です。

また、白馬岳の稜線では、このツクモグサが最も早く開花する高山植物です。 その為、ツクモグサの周りにはまだこれから芽吹く高山植物が地中に埋もれている可能性があります。 よって、登山道外への踏み込みやロープを越えてのツクモグサ観察や撮影は慎みましょう。 その時、地表に何も芽吹いていないからといって、土足で踏み荒らすのはNGなのです。

この時季の雪渓は要注意

併せて注意が必要なポイントとして、万年雪が残る白馬大雪渓。 日本三大雪渓のひとつで、ツクモグサの開花時期である6月初中旬は落石も多く、また斜度が急になる上部はまだ夏道が出ていません。 安全を考慮するとアイゼンとピッケルが必要となる行程になりますので、経験者や熟練者と共に万全の装備と準備で望む必要があります。

しかし、得られる絶景は盛夏とはまた異なる素晴らしさ!
ツクモグサにくわえ、ハイカーもまだまだ少ないため、残雪期の山歩きを楽しむ絶好の期間でもあると言えるでしょう。

ライチョウにも会いやすい!?

 (エサをついばむメスライチョウを外敵を警戒しながら見守るオスライチョウ)

更にこの時期は、いたるところでライチョウを観察することができます。 そこここを歩き回り、空にはライチョウがあちこち飛び交い、少し大袈裟に聞こえるかもしれませんが、ハイカーよりライチョウの数の方が多いのではないか?と感じるほどですよ!

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ツクモグサが見られるのはここ!その② 「横岳(八ヶ岳)」

(日ノ岳のツクモグサ群落ポイント)

続いて2箇所目は八ヶ岳です!
八ヶ岳は、夏沢峠を境に「北八ヶ岳」「南八ヶ岳」に分けられますが、ツクモグサが自生するのは「南八ヶ岳」の横岳付近、詳しくは日ノ岳辺りとなります。

こちらは開花時期には雪もほぼなくなっており、白馬岳と比べアプローチとしての難易度が易しめになるため、ツクモグサを一目見ようと多くのハイカーが鑑賞と撮影に訪れます。

また、尾根筋に咲いていることもあり、青空をバックにしたこんなステキなツクモグサの写真を撮ることが出来るかもしれませんよ!
なお、この株は登山道のすぐ脇の斜面に咲いており、有名で非常に人気のある株です。

こんな風に、八ヶ岳の主峰「赤岳」をバックにツクモグサを撮影できたら、すばらしい思い出の1枚になりますよね。ほかにも登山道の脇に咲いている株が幾つかありますので、思う存分ツクモグサを愛でましょう。

ここに行くならこの植物も要チェック

そして、同シーズンにもうひとつ楽しめる貴重な植物に「ホテイラン」があります。
美濃戸からの分岐に、赤岳鉱泉へ向かう「北沢」ルートと、行者小屋へ向かう「南沢」ルートがありますが、ホテイランは「南沢」ルートから取り付きすぐに群落しています。 こちらも、ひっそり佇むような自生の仕方なので、目を凝らして探してみてください。 比較的容易に発見することができると思います。
ホテイランも絶滅危惧種に指定されている貴重な植物ですので、ダメージを与えないよう、節度を持って楽しみましょう。

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綺麗な花を見たいのはわかるけど…グリーンロープは越えないで

登山道脇に自生している株も幾つかありますが、ツクモグサが群落している場所の多くは、登山道外か植生保護のため立入禁止エリアであることがほとんどです。 そのため、スマホではなく、望遠レンズやズーム機能があるカメラを持参することが好ましいです。

が、ツクモグサ撮影のため、登山道外に足を踏み入れたり、時にはグリーンロープ (立入禁止ロープ) を越えて足場のキケンな場所で撮影に夢中なハイカーも見掛けます。植生へのダメージに加え、自身も非常にキケンな状態です。 このような行為は慎み、山のマナーとルールを守って、高山植物を愛でましょう。

マナーをきちんと守り、ツクモグサ鑑賞を楽しもう!

いかがでしたか? 本州に2箇所しか咲かないツクモグサ、非常に貴重な高山植物のため、ぜひ見てみたいですよね。 現在、ツクモグサが見頃を迎えています。 マナーとルールを守って、このかわいらしいツクモグサの鑑賞にお出掛けしてみてはいかがでしょうか。
皆さま、どうぞ良いハイクを!

文 三宅 雅也 (山岳ライター、長野県自然保護レンジャー)

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