降旗康男監督死去

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 きらめく海。木造家屋が立ち並ぶ漁村の路地。スクリーンに映し出されていたのは、郷愁を誘う地方の風景だった▲2012年公開の映画「あなたへ」。主人公が亡き妻の散骨をするため、さまざまな人と出会いながら、妻の故郷である平戸市薄香地区へと車で旅をする。名優高倉健さんの遺作となった▲その健さんと組んで数々の秀作を送り出した映画監督、降旗康男さんが死去した。「新網走番外地」シリーズや「駅 STATION」「ホタル」などでメガホンを取った。「あなたへ」は晩年の代表作だ▲北国での撮影が多かった健さんが「あったかい所の方がいいよね」と言い、素朴な風景が残る薄香地区が旅の目的地に選ばれた。南国らしい明るい日差しの中で、主人公は妻の思い出をたどりつつ、地元で出会った漁師らと触れ合いを重ねる▲監督をはじめとするスタッフが作品の空間をつくり上げれば、後は俳優が登場人物として勝手に動いてくれる-そんな演出をする監督だったという。降旗さんのそんな演出によって、健さんの演技は味わい深さを増したのだろう▲平戸であった試写会のあいさつで、降旗さんは「皆さんが僕らと一緒につくった映画です」と話した。降旗さんが映像に残してくれた美しいふるさとを、私たちの力で守り続けたい。(泉)