豪州スーパーカー第6戦:王者マクローリン&マスタングの快進撃止まらずシーズン10勝目

 新型フォード・マスタングと王者スコット・マクローリンがシーズンを席巻している2019年VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第6戦が5月25~26日にウィントン・モーター・レースウェイで開催。レース1のオープニングではDJRチーム・ペンスキーの同士討ちが発生したものの、2戦ともにマクローリンが連勝し週末“ダブル”を達成。これで今季勝利数を10に伸ばし、圧倒的な強さを誇っている。

 メルボルン郊外のウィントンで開催された第6戦は、予選を前に不安定な天候がこれまでと違った展開をもたらし、ここまで8勝とシリーズを席巻する王者マクローリン&マスタングのペアがドライ&ウエットの路面コンディションでタイミングを見誤り、Q3を終えて5番手止まり。

 しかしマスタングのマシンアドバンテージは健在で、DJRペンスキーとともにフォード陣営の一角を担うティックフォード・レーシング、チャズ・モスタート(スーパーチープ・オート・レーシング/フォード・マスタング)が今季初ポールを獲得。2番手にもDJRのファビアン・クルサードが並び、また別の形でマスタングがフロントロウを独占した。

 対してホールデン陣営はワークスチームのトリプルエイト・レースエンジニアリングではなく、エレバス・モータースポーツのデビッド・レイノルズ(ホールデン・コモドアZB)、ウォーキンショー・アンドレッティ・ユナイテッドのジェームス・コートニー(ホールデン・コモドアZB)がセカンドロウに並び、5番手マクローリンの隣にもTeam18のマーク・ウインターボトム(ホールデン・コモドアZB)がつけるなどサテライト勢が躍進。

 本家レッドブル・レーシング・オーストラリア(RBRA)の“セブン・タイムス・チャンピオン”こと、ジェイミー・ウインカップ(ホールデン・コモドアZB)は10番手止まりと、打倒マスタングに向け厳しいグリッド位置からの勝負となった。

 天候は回復に向かい青空も覗いた土曜午後のレース1は、全車スリックタイヤでの40周120kmスプリントに。するとポールシッターのモスタートはファインスタートを切ったものの、シケイン状のターン1、2で同じマスタングのクルサードとポジション争いになり、2台ともにワイドに。

 この間隙に乗じてJGTC全日本GT選手権&スーパーGT経験者の4番手コートニーがトップでターン4へ。すると、その背後に続いてターン5へと切り込んだマクローリンが、DJRペンスキーのチームメイトと急接近し、両者のマスタングは接触。2台ともにグラスエリアに弾き出されるまさかの同士討ちを演じてしまう。

 すぐさまコースに復帰したマクローリンはコースをショートカットする形になりコートニーの前で戻るも、進路を譲ってホールデンの2台を前に出し、モスタートの前方3番手でオープニングラップのコントロールラインを通過していく。

 すると続けざまに2番手レイノルズがターン4でコートニーに仕掛け、このムーブでコースオフを喫した首位コートニーはモスタート・マスタングの背後、4番手にまでドロップすることに。

R1のスタートでは、フロントロウ2台がやりあいワイドに。セカンドロウ以下のホールデン勢が前に出る展開に
すると5番手発進の王者スコット・マクローリンと僚友ファビアン・クルサードがターン5で接触し、まさかのコースオフ
序盤の攻防で肉弾戦を演じたジェームス・コートニーは、表彰台まであと1歩の4位に「今季最大の進歩」と安堵の表情

 これで労せずして2番手のポジションに復帰したチャンピオンは、その直後にレースコントロールより対コートニーのアクシデントで「レイノルズにドライビングスタンダードの警告」として5秒加算のペナルティが宣告され、見た目上は2番手ながらさらに優位な状況に。

 すると13周目に一番手でピットへと向かった王者のマスタングは、最初のピットウインドウが一巡したところでアンダーカットに成功し、堂々パックの先頭に浮上してみせる。

 さらにオープニングのアクシデントに対し僚友クルサードに「15秒のピットストップペナルティ」が課され、これで盤石かと思われたマクローリンだが、レースが中盤を過ぎたところで「オープニングラップのショートカットで得たゲインをコース上で戻したか」の審議が行われるも、スチュワードはこれを「お咎めなし」として一件落着。

 セカンドピットウインドウ後は2番手モスタートとテール・トゥ・ノーズのバトルになるも、これを冷静に処して抑えきったマクローリンが4連勝で今季9勝目。2位モスタートのマスタングに続き、3位にホールデン最上位のレイノルズが続く表彰台となった。

「チームメイト同士の接触は、いつだってやっかいなものさ。僕は(接触した相手が)ファビアン(クルサード)だと100%知らなかったんだ」と、レース直後にアクシデントを振り返った勝者マクローリン。

「ターンイン時点で僕が優位だと信じていたし、マシンは充分に前に出ていると思った。その直後に衝撃を感じてコースオフしたんだ。ショートカットになったけど必死でコースに復帰したよ。そこからはひたすらプッシュだったけど、僕のマスタングは完璧に応えてくれたね」

 明けた日曜も、午後の200kmレースに向け予選に臨んだマクローリンは、ドライでコースレコードを更新する正真正銘のポールポジションを獲得すると、フロントロウに並んだクルサードを従えて67ラップを走破し、DJRチーム・ペンスキーが盤石のワン・ツー・フィニッシュ。

 マクローリン自身は5連勝で今季10勝目を挙げ、3位に入ったウインカップ、そして7位に終わったランク3位のシェーン-ヴァン・ギズバーゲンのRBRA勢に対し400ポイント近いリードを築く、圧巻のシーズンとなっている。

 続くVASCシリーズ第7戦は、6月14~16日にヒドゥン・バレー・レースウェイを舞台に開催されるスーパースプリント戦、ダーウィン・トリプル・クラウンとなっている。

「まるでグリップ感がない」と、週末を通じて低調だったRBRAのSVGは約400点差ながら選手権3位
空力ホモロゲの最調整や重心位置の変更など、マスタング封じの策をことごとく打破するDJRチーム・ペンスキー
日曜R2も、今季導入のリニアスプリングをいち早くモノにしたDJR勢がワン・ツーを決めている

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