新「ふるさと納税」

 故郷を離れてもう長い。時がたつほど故郷への思いが深くなる。長崎市出身で在京の人からそんな話を聞いたことがある。10年ほど前のことだが、始まったばかりの「ふるさと納税」で長崎を応援したくなり、東京で賛同してくれる人を探しているんです、と▲10代で長崎を離れたその人は当時、とうに40歳を超えていた。故郷の役に立てないかと思いを募らせていた矢先、ふるさと納税を知り「これだ」と引き寄せられたのだろう▲古里へのこういう心寄せもあるのだと感じ入った覚えがある。そんな心に応えるため、どの自治体も知恵を絞ったはずだが、やがて豪華な返礼品で目を引こうと自治体間の競争が過熱して、行きすぎといわれてきた▲ふるさと納税の新制度がきのう始まった。返礼品は地場産に限る。その調達費を寄付金の3割以下にする。行き過ぎは改められるとしても、いいことずくめではないらしい。地場産品に限ると言っても、これという地場産品のない所もある。どうしたものだろう▲例えば、寄付をした人をその土地に呼んで歴史を知ってもらう。田植え体験に温泉にと、地元らしい何かに触れてもらう。「物」に頼らない自治体も増えているという▲地元らしさを「返礼品」にして心寄せに応えていく。これから絞るべきはそういう知恵だろうか。(徹)

© 株式会社長崎新聞社