活水5年ぶりV 歓喜の涙 亡き恩師へ 思い「天」まで 新体操

新体操団体を5年ぶりに制した活水。優勝を決めて、抱き合って喜ぶ選手たち=長崎市民体育館

 亡き恩師への思いが込められた演技は、確かに「天」に届いた。今季、一度も県大会で勝てていなかった新体操団体の活水が、ほぼノーミスの演技で5年ぶりに女王の座を奪回。勝利を示す得点が表示された瞬間、選手たちの間に涙と歓喜の輪が広がった。
 今季の演技のテーマは「天」。昨年4月、62歳で他界した活水新体操の“母”吉田眞理子前監督へ感謝の思いを届けるために、教え子でもある向井監督が選択した。選手たちはこの何よりも重く、大切なテーマを演じきるために、努力に努力を重ねてきた。
 細かい表現の部分について、向井監督は選手たちに任せた。「眞理子先生が残したものを自分たちで考えて演じてほしい」。選手たちは「眞理子先生」との思い出や教えをたどりながら、最高の演技を追求。導き出した答えは「新体操を心から楽しんで、演技で感謝を伝える」だった。
 迎えた本番。“空色”の衣装を着た5人は、翼を広げるようにしなやかに舞った。こだわったのは後半の手具交換。徐々に高さを上げることで、だんだん成長して最後は天へ届くという意味を含めた。圧巻だったのが演技終盤のステップ。はつらつとした笑顔と切れのある足さばきに、会場からは自然と手拍子がわき起こった。
 得点は主将の田中が「信じられない」と驚く14.200点。10点台に届かなかった約1カ月前の県春季選手権から、大幅に加算した。吉田前監督から活水中時代に指導を受けていた黒田が言った。「眞理子先生ならこの演技でもまだまだねって言うと思う。でも、少しは褒めてくれるかも」。思いはみんな、同じだった。

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