継承と警鐘 6.3大火砕流から28年(上)溶岩ドーム 崩落の可能性 今も

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冷えて固まった溶岩が不安定に折り重なる平成新山の山頂付近(5月21日撮影)

 静寂の中に白い噴気が立ち込めている。辺りはごつごつと荒々しい大小の岩がいくつも重なり、不安定だ。雲仙・普賢岳に形成された溶岩ドーム「平成新山」の山頂部。1996年、5年半にわたった噴火活動は「終息」したが、今も活火山であることを物語る。
 「大地震によるドーム崩落には、引き続き警戒が必要。小規模な水蒸気爆発でも落石の危険性がある」。5月21日の防災登山。九州大地震火山観測研究センター(島原市)の清水洋センター長(62)は、ともに登頂した行政や消防関係者ら約70人にあらためて訴えた。
 溶岩ドームの規模は約1億立方メートル(推定)。ヤフオクドーム(福岡市)の53杯分に当たる。現在、1年間に約6センチのペースで東南東へ沈降。97年の計測開始から22年間で島原市側にずり下がるように約1.3メートル移動し、大地震や豪雨による大規模な崩落・崩壊の可能性は今も残る。
 国土交通省雲仙復興事務所(島原市)は噴火最中の93年から四半世紀にわたって溶岩ドームの崩落対策工事を進め、昨年3月、水無川流域の砂防えん堤を4.5メートルかさ上げする工事が完了。残すは一部工事のみとなった。職員数は96年の51人をピークに減少し、現在は15人。2021年度以降の事業は白紙の状態で、事務所の行く末に不安を募らせる関係者は少なくない。
 同事務所にはもう一つ、重要な役割がある。光波測距観測器など専門機器を使った溶岩ドームの監視。異常を検知すると、県と島原半島3市に即座に情報提供する仕組みで、住民避難の重要な判断材料にもなる。県担当者は「(仮に事務所がなくなれば)人的、技術面から監視業務を引き継ぐことは困難」と打ち明ける。国は今後の方針を明確にしておらず、工事完了後の行方は不透明なままだ。
 一方、九州大地震火山観測研究センターも噴火当時6人いた常駐教員が、17年からは松島健准教授(59)ただ一人。「センターは研究に特化し、気象庁が観測態勢を維持している。仮にここがなくなれば、行政が意見を求める場所がなくなり、雲仙火山のホームドクター機能が弱くなる」。松島准教授は指摘する。
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 43人が犠牲となった雲仙・普賢岳大火砕流から3日で28年。歳月の経過とともに過去の記憶は薄らいでいく。被災地の現状を見つめ、今後の課題を考える。