何この変なおじさん?知る人ぞ知る”クセ者アウトドアライター”の正体に迫る! 人気山道具比較サイト「BEST BUY GEAR」で人気を博し、最近では山の雑誌「PEAKS」でも連載を始めたアウトドアライターのユーコンカワイさん。書き綴る文章は昭和ネタが散りばめられていて、クセがかなり強い。しかし、その内容は読者に知りたい情報を的確に捉えていて、数々のレビューを行った経験が垣間見えます。今回はそんなアウトドア業界の変なおじさんユーコンカワイさんの素性やギア選びの視点について聞いてきました。

登山界に変なおじさんを発見!!

ある日、インターネットでとんでもない人を発見。

この写真、何かが変・・・。どこかわかりますか?

この人、手ぶらで傘さしてるんです。
見れば見るほど感じる違和感とは裏腹なさわやかな表情。シュールすぎてジワジワきます。
さらに、写真だけでなく独特な文章もなんだかクセに。それがこちら。

これなら不意な雨でもサッと取り出せて、即座に雨から頭部を守れて両手もフリー!
森の妖精感も出てかわいいし、山で使用しても存在感がなく全く邪魔にならないのも良い。
引用:股旅ベース『蕪山サプライズ〜死神の傘と灼熱のブラックホール〜』より

森の妖精感(笑)
どんな人なのか気になり調べてみると、名前は「ユーコンカワイ」さんというそう。さらに調べてみると、正体が少し見えてきました。

クセが強すぎる男”ユーコンカワイ”さんはこんな人

職業はグラフィックデザイナー&アウトドアライター。人気の山道具比較サイトの「BEST BUY GEAR(以下:BBG)」や人気登山情報雑誌の「PEAKS」などで、執筆をしているようです。
(※BBGからは昨年の春、卒業。)
肩書だけを見れば、かなりちゃんとした人。しかし油断は禁物。BBGでユーコンさんが書いたギアのレビュー記事の一部を、読んでみてください。

進撃のタフガイ!ORTLIEB オルトリーブ「ギアパック32」レビュー!

オルトリーブはとにかく「防水であること」に徹底的にこだわりまくっており、愚直なゲルマン魂を有したアイテムの数々は質実剛健なものばかり。創業の発端は、創業者のハートムート・オルトリーブさんが、自転車旅行中に豪雨で荷物がずぶ濡れになって「あー!もう!チッキショー!」ってなって自転車用の完全防水バッグを作ったのがきっかけ。
引用:BBG『進撃のタフガイ!ORTLIEB オルトリーブ「ギアパック32」レビュー!』

とまぁ、こんな調子でクセの強すぎる文章が続きます。

確かに謎すぎる表現も多くありますが、色眼鏡を外して読んでみると、道具の特徴がじつに分かりやすく丁寧に書かれているんです。

そのロールトップ式の開口部は、全面ではなく部分的に硬めのプラ板が配置されていて、ロールダウンする際にその部分がベースになって、柔軟素材の黒い部分が曲げやすくて留めやすいのだ。ここが鋭角に曲がることで上で輪っかみたいにならず、防水性も高まる上に留めた時の姿が美しく仕上がる。

かなり細かい部分にも着目したギアの解説。これはかなり山道具に精通している人ではないかと思い取材を依頼したところ、快く受けてくださいました。

変なおじさん?それとも凄腕アウトドアライター?その正体は?

【プロフィール】
1976年の3月12日生まれの43歳。愛知県岡崎市の出身。
中学、高校、大学と進学して、卒業後は看板屋に就職。広告や販売促進ツールのデザインを15〜16年行う。

養子として結婚して、それから岐阜に移り住んで今に至る。

実は普通のおじさん説

ぶっちゃけどこにでもありそうな普通のプロフィール。しかもアウトドアライターながら、少年時代は親と一緒に無理やり登らされたりして、むしろ山登りが嫌いだったそう。
しかし現在、登山歴は約8年。そんなユーコンさんが登山を好きになったきっかけを聞いてみましょう。

ライター吉澤

どうして登山に興味を持つようになったんですか?

ユーコンカワイさん

大人になってから野田知佑さんに憧れて川旅がしたいと思い、カヌーを買って一年後ににユーコン川を下りました。それからシェルパ斉藤さんの影響で山旅にも興味を持ち始めて、結婚後に屋久島を縦走したんです。

その時は「登山」っていうのが嫌で、頑なに「これは旅だ」って言ってましたね。

ライター吉澤

ほうほう、それから?

ユーコンカワイさん

子供が生まれてからは、しばらく休んでいました。でも我慢できなくなっちゃって。鬱憤ばらしに子供を背負って、近所の低山を登り始めたんです。

子供に手がかからなくなってからは、鈴鹿山脈の有名7座をすべて登り、北アルプスへ足を運びステップアップしました。「登山が好き」と言えるようになったのは、この頃ですね。

こんなことを言うと失礼かもしれませんが、取材前のイメージと違い、現実世界では真面目なユーコンさん。実は本人曰く、ネットの世界でしか粋がれない現代っ子なんだそう。

なんでそんなに山道具に詳しいの?

登山歴が特別長いわけではないのに、山道具に詳しいユーコンさん。その秘密を探ってみましょう。

ライター吉澤

真面目な話、ユーコンさんがどうしてそんなに山道具に詳しいのか気になります。

ユーコンカワイさん

BBGの立ち上げに関わった1人だからですかね。

ライター吉澤

どういう意味ですか?

ユーコンカワイさん

当初、BBGは山道具を条件で絞り込んで比較できるサイトにしようと考えて立ち上げたんです。

なので、立ち上げ直後は日本で販売されているほとんどすべての山道具を、ひたすら登録していました。

ライター吉澤

今のBBGは徹底したギアの比較レビュー記事を掲載するサイトになっているので、当初の構想とかなり変わったんですね。

ユーコンカワイさん

そうですね。記事を書く時は全て実費でギアを購入し、徹底的にユーザー目線で書くことを心がけました。ギアテストも必ず実際の現場で使用し、そこで感じたことを素直に書くようにしましたよ。その経験から、山道具に詳しくなっていきましたね。

あれだけ細かなポイントまでレビューできるのは、多くのギアを実際に使用した経験が大きいんですね。

ギアに求めるのは”ロマン”って、どういうこと?

これまで多くのギアを実際に試し、その良し悪しを知るユーコンさん。そこで、山を楽しむためのギア選びのポイントを聞いてみました。

ライター吉澤

有名メーカーやガレージブランドのアイテムなどのギアを使われていますが、どんな視点で選んでいるんですか?

ユーコンカワイさん

1つは道具にロマンがあるかないか。それと、僕の登山スタイルに合ってるかどうかですね。

ライター吉澤

ロマン?ここはふざけるポイントじゃないので、軽さとか、機能とか、素材とかもっと無いんですか?

ユーコンカワイさん

いや、そんなことはど~だっていい!僕はギアマニアじゃないし、スペックオタクでもない。ましてや、親の仇のように軽量化を目指すグラムカッターでもないので。

ちなみに男のロマンとは「一見無駄だな~って思える道具でも”開発にかける熱意””込められた作りての遊び心”、”大手メーカーなのにこんなのも作っちゃうの!?的なギャップ”」だそうですが、まったく意味がわかりません。

そこで具体的な例として、ユーコンさんの愛用しているロマン溢れる山道具、マイベストギア(=以下、MBG)達を紹介してもらいました。

ロマン溢れるユーコンさんのマイベストギア!

MBG①:バーゴ アルティメットファイヤースターター

ユーコンカワイさん

ぶっちゃけ火吹き棒って必要ないでしょ?これのメリットわかる?

ライター吉澤

これを山に持っていく良さ・・・。

ユーコンカワイさん

これがあるだけで自分に酔えるんです。それとPR動画で見た、空気を送り込むたびに濡れた薪が勢いよく燃え上がる映像で心を掴まれました。そんな理由で、手に入れてからすっかり僕の焚き火仲間です。

MBG②:フリーライト フレボR ストーブ

ライター吉澤

アルコールストーブって炎が見えないからちゃんと燃えているか分かんないし、なにかと不便な道具じゃないですか?

ユーコンカワイさん

そう。大手企業は絶対に力を注がないそんな道具を進化させちゃったのがこいつ。その熱意にグッときました。炎がトルネードで燃え上がるため、あっという間にお湯が湧きます。

MBG③:インジンジ ライナークルー

ユーコンカワイさん

履くだけで足のサラサラ感が持続するし、靴擦れも劇的に減りました。その恩恵を受けてからは、僕の登山に欠かすことができないマストアイテムになっていますね穴でも開いてしまったら、もう一度買うであろう愛用品です

ライター吉澤

これは真面目な理由なんですね。

どうやって自分のスタイルを見つければいいの?

山道具選びに大切なもう一つの視点、「自分のスタイルに合っているか」ということ。そもそもスタイルに合う合わないを考えるためには、自分のスタイルを知らないといけません。でも、自分の登山スタイルってどうやって見つけるのでしょうか?

ライター吉澤

道具を初めて買う人って、何を選べばいいのか分からない人が大半だと思うんです。登山スタイルを見つけるというのは、どうやって見つけるのですか?

ユーコンカワイさん

最初は右も左も分からないはずなので、近所の気楽な日帰り低山から始めて、いずれ山小屋泊やテント泊、縦走登山とか、王道を一通りやってみるといいでしょう。

ライター吉澤

まずはいろんな登山を体験するんですね。

ユーコンカワイさん

慣れてきたら、単独で山に登ることをおすすめします。一人で山に登ると、自分だけの価値観が分かってくるんです。自分はアルプスのテン場で寝るのが楽しいなーとか、低山のロングハイク系が好きなんだなーとか、山で釣りするのが気持ちいいんだなーとか。

その価値観を素直に受け止めて、気持ちの赴くままに登山を続けていれば、そのうち自分の登山スタイルが見つかると思います。

興味があるのは山の時間を楽しくしてくれるギア

ライター吉澤

ちなみにユーコンさんの登山スタイルって?

ユーコンカワイさん

僕はピークハントとかはどうでもよくて、山に入って気持ちのいい場所で泊まって帰ってくるだけで充分なんです。

だから、山にいる時間を楽しくしてくれる道具に興味があります。

ライター吉澤

変なアイテム持っていますもんね。(笑)

ユーコンカワイさん

今は道具を削ることに楽しさを感じているんですが、軽くなった分、お酒とかおもしろアイテムを持っていってます。

MBG④:ハイパーライトマウンテンギア 2400ウインドライダー

そんなユーコンさんのスタイルにぴったり合った愛用ギアがコレ!

ユーコンカワイさん

UL界隈ではありがちな形のバックパックなんですけど、軽いのに背負心地が良くて、背面ステーもしっかりしているから重い荷物も快適に背負うことができるし、40Lっていう容量もちょうどいい。

しかも表生地がキューベンファイバーとポリエステルのハイブリッド生地だから、タフで防水性に優れていて藪こぎもへっちゃら。

ライター吉澤

つまり、沢登りもするユーコンさんのスタイルにぴったりのザック、ということですね!

自分にあった山道具を見つけるために大切なのが「登山スタイル」。いろんな縦走、日帰り、テント泊などいろんなスタイルに挑戦してみて、自分が純粋に楽しいと思えるスタイルを見つけることが大切です。

己の気持ちにまっすぐな大人!これがユーコンカワイさんだ。

インタビューをする前は、クセの塊みたいな人だと想像していました。ですが実際はとても真面目で、質問に対しても丁寧に答えていただきました。

それにもしても道具選びの視点が「男のロマン」とは…。しかし、話を聞いているうちに分かってきたのは、ユーコンカワイさんは、自分の気持に素直に耳を傾けて、まっすぐに生きている人なのだということ。道具選びしかり、登山スタイルしかり、それがあのユーモアに溢れた文体にも現れているのでしょう。これから先、ユーコンカワイさんはどこへ向かうのか、今後の活躍が楽しみです!

ユーコンカワイさんの真面目な活動に注目!

こちら、ユーコンカワイさんがおふざけゼロで取り組んでいる「川ガキと川オトナと取り戻す」プロジェクト。別にゴーストライターを雇って真面目な文章を書かせているんじゃないか?と疑いたくなるほど、真摯な言葉でプロジェクトに注ぐ想いと熱意が語られている。この活動がどんな広がりを見せるのか。今後に期待だ!

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