【登戸児童殺傷】8日ぶり「友だちと会えて良かった」 カリタス小登校再開

殺傷事件後、8日ぶりに登校する私立カリタス小学校の児童ら。警察官や保護者が見守る中、通学用にチャーターされた市バスに乗り込んだ=5日午前7時35分ごろ、川崎市多摩区の登戸駅

 川崎市多摩区の登戸駅近くの路上で5月28日、スクールバスを待っていた児童ら20人が殺傷された事件を受け、休校していた私立カリタス小学校(同区)が5日、再開した。バスによる同駅と学校間の送迎は乗り場を変更して実施。児童らは教職員や警備員、警察官らが見守る中、悲しい事件を乗り越え、8日ぶりの学びやへと向かった。

 午前7時15分。同駅前のバス乗り場から児童たちが次々と乗り込んでいった。中には手に花束を持った女児も。級友との再会に笑顔を見せる姿もあった。

 運営する学校法人カリタス学園によると、全校生徒の96.7%に当たる624人が登校。服装も自由としたが、95%以上が制服だった。「一週間ぶりに友だちと会えて良かった」。登校後開かれた全校集会ではそんな声も聞かれたという。

 「どんな様子で登校するか心配だったが、大きな動揺が見られなかったのがせめてもの救いだった」と同学園の高松広明事務局長。当面は通常授業を行わず、スクールカウンセラー2人も常駐させる方針で、「児童の様子を見ながら無理させず、徐々に戻していく」とした。

 事件現場がスクールバスの停留所だったことから、学園は再開に当たって心的ストレスに配慮し、バスの発着を約300メートル離れた同駅前に変更。保有車両を使わず、市バスに運行を有償委託するとともに、現場を迂回(うかい)する経路を取った。

 従来認めていなかった保護者の送迎も認めたため、事件前、バス通学者は約500人いたが、この日は半数ほどだったという。

 さらに、同駅のバス乗り場付近と、JR中野島駅から学校までの通学路に警察官や警備員、教職員らを配置。周辺には市立小学校もあり、登校時の見守りボランティアを行う男性(80)は「事件はあってはならないこと。通学が再開したらすべて終わりというわけではなく、体力が続く限り見守りを続けていきたい」と話した。

 事件現場ではいまも献花が続く。ささげられた花は同窓会組織や行政が協力して回収作業に当たっているが、1週間たってもなお、悼む人は絶えない。学園は今月末に予定する追悼ミサまで、花の管理や清掃などを行うという。

 事件は5月28日午前7時40分ごろ発生。同校の児童らが次々と刃物で襲われ、保護者の男性(39)と、同校6年の女児(11)が亡くなり、保護者の女性(45)と女児2人が重傷を負った。襲撃したとされる岩崎隆一容疑者(51)=同市麻生区=はその場で自殺した。

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