ジム&カフェ 夫婦で起業 双子の誕生きっかけに 育児と両立

自宅でカフェとジム(奥)を開業した内藤さん夫婦=長崎市

 長崎県長崎市芒塚町の30代夫婦が自宅でトレーニングジムとカフェを開業した。双子が生まれたのを機に、育児と両立しながらできることを探してチャレンジ。妻のボランティア活動や趣味が高じ、アスリートで理学療法士の夫の経験も生かす。折に触れて抱いた「もったいない」という感覚が起業の原動力になった。

 木のぬくもりを感じる部屋の壁棚には50種類もの生酵素シロップの瓶詰が並び、壁の向こうには筋トレ用の器具がそろう。内藤誠さん(31)、恵梨さん(31)夫婦が今月、同時オープンさせたジム「ENnex(エン ネックス)」と「太陽と月の酵素カフェ」だ。

 カフェでは、長崎の山野草で飾り付けたキャンドルも販売している。恵梨さんがデザインし、県内外の障害者施設に製造を委託。売上金の一部をタイのミャンマー難民キャンプに送っている。

 海上自衛官だった恵梨さんは退官後、イベント会社などを経てフリーのMC(進行役)に。葬儀場の依頼が多く、そこで1回使っただけのろうそくが大量に廃棄されるのを見て「もったいない」と思った。再利用先を探すうちに知人から、電灯が整備されていない難民キャンプを紹介された。さらに支援を広げようと販売に乗りだした。昨年は、長崎原爆の日前夜に人々がともす「平和の灯」のキャンドルもリサイクル。子どもの読み書きを応援するため絵本も届けている。

 誠さんは、五島市で2017年に開催された国際トライアスロン大会「バラモンキング」のAタイプ(総距離226キロ)で年代別2位にもなったアスリート。市内の病院で7年間リハビリを担当。病気やけがをしてから筋トレを始める人は多いが、予防で取り組む人が少ないことに「もったいない」と感じ、組織にいるより個人ならもっと力になれるのではと考えた。

 ボランティア仲間でもあった2人は結婚し、昨年8月に双子が生まれた。「子育ては今しかできない。夫婦一緒にやらないと、もったいない」と恵梨さん。出産1週間後に設立した会社の社名は「すてきなご縁をつなげたい」との思いを込め「EN」。誠さんは自宅を改装し、ジムとカフェを開いた。

 恵梨さんが以前、難民キャンプから地元に戻ると、耕作放棄地でビワやかんきつ類が放置されているのが目に留まった。「もったいない」。傷物を農家から譲り受け、加熱せず砂糖漬けにした生酵素シロップを作り始めた。人の自然治癒力を高めて健康や美容につなげるドリンクは、カフェの看板メニューに。乳酸飲料もジンジャーエールも手作りだ。

 まだ手のかかる子どもを連れていても、体を引き締めたり、一息つくことができたり。高齢者や持病を持った人でも、個別レッスンで安心して体力回復を図れる-。そんな“居場所”づくりを2人は目指している。

 ■メモ 
 営業時間は午前6時半~午後8時(カフェは同5時まで)。日曜定休。カフェはモーニング500円、ランチ700円、生酵素ドリンク350円~。ジムは入会金1万円(8月末まで無料)。基本コース(月2回の1時間個人指導、器具は使い放題)7000円~。1ドリンク付きお試し体験1時間1000円。問い合わせは同店(電095.894.7101)。

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