【MLB】少女に打球直撃で広がるネット拡大への声 一方で疑問の声も…「酷いことか?」

ファウルがファンに直撃し、涙するカブスのアルモラJr.(中央)【写真:Getty Images】

シンシナティ地元紙のコラムニストが主張「なぜ4歳の子供をダグアウト近くの席に…」

 5月29日(日本時間30日)にヒューストンの「ミニッツ・メイド・パーク」で行われたアストロズ-カブス戦で、痛烈なライナーのファウルボールが観戦中の4歳の少女に直撃するというアクシデントがあった。米国では、内野の防護ネット拡大への議論があらためて活発化しているが、シンシナティの地元紙「シンシナティ・エンクワイヤラー」のコラムニストは、観戦するファンにも責任があると指摘している。

 アストロズ-カブス戦では、4回無死一、二塁の場面でカブスのアルモラJr.が打った三塁方向への痛烈なライナーが、客席の少女に直撃。その瞬間、球場が静まり返った。アルモラJr.はその場で座り込んで涙。同僚のヘイワードやバエス、マドン監督に慰められ、その他の選手も呆然と立ち尽くすなどショックを隠せない様子だった。

 その後、米国では防護ネット拡大への議論が活発に。メジャーの球場では現在、両ダグアウトの上まではネットが張られているものの、その先にはなく、痛烈な打球が客席に飛び込むこともある。米メディアからは今回、ネットを拡大すべきという声が多く上がり、“否定派”の意見をバッサリと切る記事も見られた。ただ、今回の「シンシナティ・エンクワイヤラー」のコラムはそんな声とは正反対のものとなっている。

 同紙のコラムニスト、ポール・ドアティ―氏が執筆した「MLBのネット問題はシンプルなものではない」とのタイトルの記事では、「1週間前、ミニッツ・メイド・パークで4歳の少女がファウルボールに当たって怪我をした。それに対する反応は、ダグアウトからダグアウトまでの防護ネットを拡大すべきという分別のあるものだった。日本と韓国のリーグでは、ファウルポールからファウルポールまでネットがある」と紹介。「これが間違った考えだと誰も主張することはできない。誰も無神経だと思われたくない。そして、明らかに安全は重要なことである」とも綴った上で「しかし……」と疑問を投げかけている。

子供と観戦するときは「常に上の階の席に座る」「常に注意していたくない」

 ドアティー氏は観客がどこまで責任を持つべきなのかと言及した上で、「ネット拡大を望んでいないファンたちもいるため、ネット拡大は簡単なことではない。そのようなファンたちは近くでプレーを見るために高いチケットを購入している。ファウルボールを手に入れられる可能性を楽しみにしている。彼らは間違っているのだろうか?」と、ネット拡大“否定派”の意見に理解を示しているのだ。

 では、観客はどうすべきなのか。ドアティー氏は実際に自分が子供と試合を観に行くときは、「常に上の階の席に座る」という。「彼らを危険にさらしたくはない。ライナーが彼らの頭に当たるかもしれないと常に注意していたくない」というのが理由で、「なぜ4歳の子供をダグアウト近くの席に座らせる人がいるのか、私は理解しかねる」と言及。そして、「もちろん、それは自由である。自分の選択の結果を受け入れる準備ができているべきではないだろうか? そう言うのは酷いことだろうか?」と投げかけている。

 近年、メジャーの打者の打球速度は速くなっていると、選手たちも認めている。だからこそ観戦中の事故のリスクを軽減するために防護ネットを拡大してほしいというプレーヤーの声も多い。ただ、コラムでは「世の中のあらゆる事故を全て防止することはできない。そうしようと試みると、皆が少し自由を失う」と指摘。ネットを拡大することで失うものもあるとの主張だ。MLBは今後、どのような解決策を提示するのだろうか。(Full-Count編集部)

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