伝統の祭りばやしが30年を経て復活 横須賀・長井の漆山

約30年ぶりに復活したおはやしを披露する漆山地区の住民ら=横須賀市長井

 横須賀市長井の漆山地区にかつて継承されていた祭りばやしが、約30年ぶりに復活した。地域に元気を取り戻そうと、住民らがカセットテープに録音された演奏を譜面に起こし、約1年かけて練習してきた。まだ演目は2曲にとどまり“完成形”ではないものの、関係者は「後世までつないでいきたい」と意気込んでいる。

 復活したのは、同地区で毎年6月、無病息災を願って「漆山お天王様」を祭る際、地域住民が演奏する祭りばやし。漆山町内会によると、山車に乗った子どもたちらが、みこしとともに地域を練り歩いていたが、少子化で担い手がいなくなり、途絶えた。その後の祭りでは、以前に録音されたテープを流していた。

 復活のきっかけは、市内15の地区でつくる長井の祭りが2017年7月、半世紀ぶりに開催され、祭りばやしも披露されたことだった。通過した漆山町内会の会員の胸中に、かつて自分たちの地区でも盛んに演奏されていた祭りばやしを復活させたいとの思いが去来した。

 近い地区の住民の協力も得ながら、録音テープから譜面を作成。昨年5月から回覧板による呼び掛けに応えた10人で、和太鼓の練習を始めた。長く倉庫でほこりをかぶっていた山車を引っ張り出して修復。地域で声を掛け合い、メンバーを20人弱まで増やした。

 今月2日。祭り初日に行われる「神幸祭」で、約30年ぶりにおはやしを披露。8日の最終日に開かれた「還幸祭」でも、子どもたちらを乗せた山車から伝統のおはやしが響くと、住民らから大きな拍手が上がった。

 今回、町内会住民による演奏は主に和太鼓で、今後笛やかねも練習していく。山田利一会長(66)は「まだ始まったばかり。地域から若者は減っているが、『いい古里』と思ってもらえる地域にしたい」と意気込み、近山通正前会長(76)は「おはやしが千年も万年も続いてほしい」と願っている。

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