「トルコライス」に難色 “母国”トルコ訪問時に指摘受ける

長崎名物トルコライス(坂本さん提供)

 「大人のお子さまランチ」と呼ばれて全国的にも知名度が上がっている長崎市の「トルコライス」。このご当地グルメに“母国”トルコの料理人が「トルコ料理にはない様式」としてトルコの名称を冠することに難色を示していることが分かった。西洋料理人でつくる全日本司厨士(しちゅうし)協会県本部会長の坂本洋司さんらが5月にトルコを親善訪問した際に指摘された。
 トルコライスは豚カツ、ピラフ、スパゲティを一皿に盛り付けた料理。長崎市は、和歌山県沖で1890年9月16日に起きたトルコ(当時はオスマン帝国)軍艦「エルトゥールル号」の遭難事件にちなんで9月16日を「トルコライスの日」、9月を「トルコライス推進月間」と定めてPRしている。
 坂本さんによると、在日トルコ大使館から食文化を通じた国際親善を図りたいと要請を受けて、5月下旬、全日本司厨士協会の宇都宮久俊会長らとトルコ・イスタンブールなどを訪問。トルコ料理人・シェフ連盟との間で「両国の食文化の発展に寄与する」とした国際料理友好親善宣言書に調印した。
 指摘を受けたのは同連盟との会食の席。坂本さんがトルコライスを紹介したところ、同連盟のY・ヤルチュン・マナブ会長が「トルコには豚カツはない」と述べ、さらに「炭水化物が同じ皿に乗ることはない」とピラフとスパゲティを一皿に盛り付けることについても言及した。
 イスラム教圏のトルコでは豚肉は食べない。坂本さんは「豚カツと決まっているわけではなく、牛肉でも魚介類でもいい」と理解を求めたが、マナブ会長からは「連盟の方で『こういうものなら出せる』というメニューを考えたい」との提案もあった。
 トルコライスは1950年代に長崎で誕生したとされるが、その由来は諸説あり、トルコ料理とは直接関係ないともいわれる。
 坂本さんは九州の料理店と協力して、トルコライスの魅力を満喫してもらう会員制の「長崎トルコライスクラブ」を創設する計画を進めており、トルコの本場料理と供宴する「トルコライスサミット」などのイベントも開く考え。「3種類の料理をワンプレートで提供する長崎オリジナルの洋食であることを理解してもらいながら、日本とトルコの懸け橋となる名物料理として発信したい」としている。

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