9.16トルコライスの日 見直し 長崎市「聖なる日」に配慮 推進月間も取りやめ

トルコ料理を参考にした「ヴェリートルコ」など9種類を提供している「ツル茶ん」の川村社長=長崎市油屋町

 長崎市は19日、ご当地グルメ「トルコライス」をPRするため2010年に制定した「トルコライスの日」(9月16日)と「トルコライス推進月間」(9月)を取りやめると決めた。新たな日付を設定するかなど、今後については関係者と協議する方針。

 親日国トルコとの友好関係の始まりとされる、1890年9月16日の和歌山県沖でのトルコ(当時はオスマン帝国)軍艦エルトゥールル号遭難事故にちなんでいたが、今月9日、在日トルコ大使館から制定の経緯について問い合わせがあったという。
 長崎市ながさきの食推進室は「抗議を受けたわけではないが、『(われわれにとって)9月16日は殉職した人を思う聖なる日』との指摘もあったことを重く受け止めた。遭難事故をめぐる『友好』の側面に着目したのだが配慮が足りなかったかもしれない」としている。
 同船の遭難でトルコの親善使節団580人余が死亡・行方不明になったが、近隣住民が必死の活動で69人を救助し、日本海軍がトルコまで送り届けたエピソードでも知られる。トルコでは両国を結ぶ重要な出来事として教科書でも紹介されているという。
 トルコライスをめぐっては、全日本司厨士(しちゅうし)協会県本部の坂本洋司会長らが5月にトルコを親善訪問した際、トルコ料理にはない様式との指摘を受けていたことを今月8日付長崎新聞に掲載。ネット上で、トルコライスのネーミングなどについて意見が相次いでいた。

 ◎長崎に定着 飲食店側理解求める
 長崎市のご当地グルメ「トルコライス」について、ネット上で「トルコ料理と直接関係ないなら名前を見直すべきだ」などの意見が相次いだ問題。地元の料理店からは「長崎発のオリジナル料理。50年以上続いて名前も定着している」と理解を求める声が上がっている。
 トルコライスは1950年代に長崎で誕生したといわれる洋食で、豚肉を禁忌とするイスラム教圏のトルコ料理とは直接関係ないとされる。名前の起源については諸説あり、ピラフがインドや中国、スパゲティがイタリアを表し、その中間点のトルコにちなんだとする「地形説」や、3種類の料理を三色旗(トリコロール)になぞらえたのがなまった説などが有名。
 トルコライスの人気店「ツル茶ん」(油屋町)の川村隆男社長(54)は「トルコの方が豚肉を食べないことは知っており、もちろん不敬の思いがあるわけではない。トルコライスは古くから異文化に開かれていた長崎の土地が愛情を持って育てた料理。今や豚カツだけでなく、牛やシーフードなど多くのバリエーションがある料理に進化している」と強調。同店ではトルコの肉料理ケバブを参考にした牛ステーキなどをのせた「ヴェリートルコ」など9種類を提供している。
 3年前の開店以来、トルコライスを中心メニューに据えている「レッケル」(松が枝町)の松島伸一代表(46)は外国人向けメニュー表に「Turkish Rice」ではなく「Toruko Rice」と表記。「トルコライスは固有名詞。ちゃんぽん、皿うどんに並ぶ長崎のソウルフードであることを理解してほしい」と話している。

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