【かながわ参院選2019】決戦前夜(上)波紋広がる自公連携

 約800人が集まった会場は、いつもとは違う空気に包まれていた。

 5月18日、自民党県連が開いた決起大会。2期目に向けた決意表明に立った島村大氏が力を込める。

 「医職住・日本一の神奈川にするため、引き続き仕事をさせてほしい」

 参院選直前の結束を固める場はしかし、笑い声が絶えなかった。

 小泉進次郎氏(衆院11区)が得意のスピーチで聴衆を沸かせると、続いてマイクを握った10人近い国会議員らも便乗して「進次郎節」を連発。

 「大きな笑いは本当にありがたいが、選挙戦で勝ってからお願いしたい」

 割って入った県連会長の小此木八郎氏(3区)は、組織の緩みに警戒を隠さなかった。

 4月の統一地方選で全力を注いだ地方議員や党員が、再びフル稼働を求められる12年に1度の「亥(い)年選挙」。自民が陣営の引き締めに向けて打ち出した目標は、6年前の初出馬で全国トップを飾った113万票の上積みだ。

 島村氏は県内全支部での組織固めに奔走するが、手足となる陣営の緊張感は高まっていない。複数擁立を見送った昨年12月以降、「1位当選は揺るがない」との楽勝ムードが漂うからだ。くすぶり続ける衆参同日選に神経をとがらせる現状も、大一番に向けた集中力を欠く要因とされる。

 しかし、高ぶらない戦意に火を付けたのは、思わぬ“事件”だった。

 「何としても勝利させてもらいたい」

 5月28日夜、県民ホール。公明党で再選を目指す佐々木さやか氏の集会で声を張り上げたのは、菅義偉官房長官(2区)。石井啓一国土交通相と一緒に佐々木氏の手を高く掲げ、公明支援を呼び掛けたのだ。

 定員約2500人のホールに収まりきらない来場者の大半は、国土交通関係団体の会員。安倍政権を支える2氏を前面に出し、自民支持層への浸透を図った。

 「目標は75万票。前回より12万票増やすのは、支持母体の創価学会票だけでは達成できない。無党派層や保守層への浸透が必要だ」

 公明の関係者が語るのは、連立与党の信頼に基づく相互支援への期待。全国で32ある1人区で自民候補を推薦する「見返り」として神奈川など5選挙区で菅氏のてこ入れを正当化する。

 公明が危機感を高める背景には、12年前の参院選で過去最多得票を得ていながら公認候補が落選した苦い経験があるからだ。ただ、組織票の流出を懸念する自民サイドは穏やかではない。「いくら何でも、やり過ぎだ」。地方議員には不満がくすぶる。

 「自民・公明両党で安定多数を目指す」。圧勝した6年前の反動を懸念する自民の甘利明選対委員長(13区)は、低めの目標で予防線を張る。だが、その達成を目指すだけでも、足元では波紋が広がっている。

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 参院選で有力視される7月4日の公示日まで1カ月を切り、改選定数4の神奈川選挙区は与野党混戦の構図がほぼ固まった。決戦前夜に熱を帯びる各陣営の駆け引きを追う。

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