MotoGP:2018年型ホンダRC213Vでトップ集団が見えた中上。カタルーニャGPでは表彰台の可能性も

 MotoGPクラスで2年目のシーズンを戦っているLCRホンダ・イデミツの中上貴晶。2019年シーズンは開幕戦から4戦連続でトップ10フィニッシュと好調だったが、第5戦フランスGPでは決勝では初転倒を喫し、リタイアに終わっていた。そんな中上が第6戦イタリアGPではMotoGPクラスベストリザルトとなる5位に入賞した。

 イタリアGPの舞台であるムジェロは、Moto2レギュラー参戦1年目のレースで、初めてトップを走った経験を持つなど、レイアウト的にも中上が得意とするコースだ。しかし、昨年の決勝はスタート直後の2コーナーで転倒したダニ・ペドロサ(レプソル・ホンダ・チーム)に接触されて転倒。一度ピットに戻った後、再びコースに戻り、トップから5周遅れとなったものの、18位で完走という結果に終わった。

 2019年シーズンのイタリアGP初日はフリー走行1回目では1分47秒925で7番手と順調なスタートを切ったが、フリー走行2回目では前後ハードタイヤのチョイスが思うようにマッチせず、1分47秒483とタイムは縮めたものの14番手へとポジションを落としてしまった。

 初日を終えた後、中上は「ムジェロはストレートが長いので、スリップストリームを使おうと思いました。そのためコース上でほかの選手を待ってしまい、時間をロスしました。それが反省点です」とコメント。

「今大会、決勝に向けて想定していたのはハードタイヤでしたが、今日の感じでは前後ミディアムが決勝に向けてパッケージになると思います。FP3(フリー走行3回目)では、あと0.5秒は短縮しないとトップ10には入れないと思うので、しっかりタイムを出したいです。ダイレクトでQ2を目指し、予選ではベストグリッドを目指します」

中上貴晶(LCRホンダ・イデミツ)

 この言葉どおり、中上は2日目午前中のFP3で1分46秒456を記録して4番手につけ、予選Q2進出を果たす。ここまでの6戦で5回目のQ2進出。トップ10の常連となった中上の成長を示す結果だ。Q2では1分46秒387を記録したものの10番手となった。

 今シーズン、中上は2018年型のホンダRC213Vで戦っている。昨年、マルク・マルケス(レプソル・ホンダ・チーム)がタイトルを獲得したマシンだ。コンディションなど条件はまったく同じという訳ではないが、マルケスが昨年記録したタイムを上回ることが、中上の各レースでの目標のひとつである。

 マルケスは、昨年のムジェロのQ2では1分46秒454を記録していたが、中上は今年のイタリアGPで1分46秒387と、このタイムを0.067秒上回った。もちろん、2019年型を駆るマルケスは、オールタイムラップレコードとなる1分45秒519を記録してポールポジションを獲得。中上に0.868秒差をつけたが、Q2でのトップスピードデータではマルケスが348.4km/hだったのに対し、中上は336.7km/hと約12km/hの差があった。

 また、ウイークを通じたトップスピードデータでも、トップのアンドレア・ドヴィツィオーゾ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)がFP3で356.7km/hとムジェロのトップスピード記録を更新したのに対し、中上は決勝の346.2km/hがベストと、約10km/hの差がある。トップスピードに関しては、ムジェロではスリップストリームの影響も大きいため一概には言えないが、平均的に中上のマシンのトップスピードデータは他のライダーに比べて遅く、それだけに中上がインフィールドでタイムを稼いでいたことを物語るデータでもある。

■決勝は昨年の勝者ロレンソを上回ってフィニッシュ

 そして、迎えた決勝では、好スタートを切った中上は序盤からトップ集団に加わる。MotoGPクラスでは初のトップ集団の中で戦った中上は、決勝でトップを争うライダーを間近に観察することができ、多くのことを学ぶことができたようだ。

 レース中盤以降はトップ集団からは少しずつ遅れたものの、チームメイトのカル・クラッチロー(LCRホンダ・カストロール)を交わしてセカンドグループの先頭をキープ。終盤には後方からマーベリック・ビニャーレス(モンスターエナジー・ヤマハMotoGP)が追い上げてきたが、ペースをキープしてMotoGPクラス自己ベスト、インディペンデントチームのトップとなる5位でフィニッシュした。

イタリアGPでインディペンデントチームライダーのトップでフィニッシュした中上貴晶

 優勝したダニロ・ペトルッチ(ミッション・ウィノウ・ドゥカティ)のレースタイムは41分33秒794。昨年の優勝者、ホルヘ・ロレンソ(2018年はドゥカティに所属)が記録した41分43秒230を約10秒更新した。一方、中上のレースタイムはペトルッチから6秒535遅れの41分40秒329。昨年のロレンソの優勝タイムより約3秒速い。もちろん、MotoGPマシンはレースごと、年度ごとに進化していき、タイムは短縮されて行くものだが、中上も2018年型マシンを着実に進化させている。

 次戦も中上が得意とするカタルーニャGP。バルセロナ‐カタルニア・サーキットは、スペイン選手権時代から走り込んでおり、Moto2クラスでは2016年には3位表彰台に立った経験を持つコースだ。トップ集団の見えた中上にMotoGPクラスでの初表彰台獲得の期待が高まる。

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