ハム吉田輝デビュー効果、前日より観客1.2万人増 白星も自己採点「50~60点」

日本ハム・吉田輝星【写真:石川加奈子】

広島相手に5回4安打1失点と好投、84球中変化球はわずか17球と直球割合80%

■日本ハム 2-1 広島(交流戦・12日・札幌ドーム)

 日本ハムのドラフト1位ルーキー、吉田輝星投手が12日、本拠地・広島戦で5回4安打1失点と好投し、デビュー戦を白星で飾った。

 昨夏の甲子園で金足農を準優勝に導いた力は本物だった。初回いきなり長野に右前打を許した後に2四球を与えて招いた1死満塁のピンチにも動じない。「初回のピンチはいつものことというか、いつも通りなので」と涼しい顔。5番の西川に対して「ストレートで押して打たれたらしょうがない」と直球勝負を挑み、最後は140キロ外角高めを振らせて3球三振に斬って取った。

 このボールで直球に自信を抱くと、伸びのある直球をどんどん投げ込んでいく。2回に田中広と長野の連続長短打で1点を失ったものの、その裏に勝ち越してもらうと、3回には「あそこが一番気持ちを入れて頑張りました」とギアを上げ、クリーンアップを3人で片付けた。

 84球中変化球はわずか17球と80%直球で広島打線に挑み、4三振を奪う衝撃のデビュー。最速は147キロだった。一番良かったボールには、5回の最後の打者、バティスタを右飛に打ち取る直前の145キロ直球を挙げた。「ど真ん中で危ないかなと思ったけれど、空振りでバットがボールの下を通った」と手応えを口にした。「抜けたボールは長野さんに打たれたけれど、指に掛かったボールで空振りやファウルを取れた。直球が通じたのは自信になりました」とうなずいた。

 イースタン・リーグでは、変化球でかわすことなく、直球に磨きをかけきた。9試合に登板して0勝3敗で防御率は4.15。直近の6月4日・巨人戦は3回6安打6失点と結果を残せなかったが、前日よりも1万2000人多い3万3563人の観衆を魅了する投球を披露した。

21世紀生まれの投手初勝利も浮かれず「甘いボールを捉え損ねることはなくなってくる」

 プロとしての第一歩を踏み出した試合で吉田輝が実感したのは、チームメートの存在の大きさ。この先大事にしたいことを問われると「一人でやらないこと。今日も石井さんの守備だったり、先輩たちが点を取ってくれたのがあって勝てました。周りの大切さが分かりました」と3回に遊直をジャンプ一番好捕した石井一成内野手の名前を挙げ、先輩たちに感謝した。

 21世紀生まれ初のプロ初登板初勝利の快挙を成し遂げても、18歳右腕に浮かれた様子は全くない。この日の投球を「50~60点ぐらい」と自己採点。「初登板だから(相手に)データもあまりなくて、ストレートだけでいけましたが、甘いボールを捉え損ねることは回数を重ねる毎になくなってくると思います。いろんな変化球とか、インコースをしっかり突くだとか総合的に見ると低いので。ストレートは良かったですけど。総合力とストレート、両方を徐々に上げていければなと思います」と収穫だけではなく、課題もしっかり頭の中で整理していた。

「今のところはうまくいっているんですけど、1軍で活躍することがプロ野球になりたいと思った理由。ここがスタートラインだと気を引き締めて、どんどん先に進んでいきたいと思います」と語った18歳右腕。将来のエース候補が冷静沈着に大きな一歩を踏み出した。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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