貧困家庭支える一歩に平塚のNPOが「0円ショップ」開催

生活困窮者らに食事や日用品を無償で配った「0円ショップ」 =平塚市西部福祉会館

 生活困窮者やひとり親家庭を支援するNPO法人「フードバンクひらつか」は9日、食料品や日用品を無償で配布するイベント「0円ショップ」を平塚市西部福祉会館(同市公所)で行った。日頃は貧困で苦しむ世帯のみに食料を提供しているが、この日だけは「誰でも自由に持って行って」。生活困窮者が少しでも気軽に足を運べるようにと、あえて門戸を広げた活動に地元の東海大学の学生らもスタッフとして参加、貧困問題の現場を学んだ。

 0円ショップは昨年11月から始まり今回が2回目の試み。午前11時の“開店”前から長蛇の列ができるなど約200人が訪れた。

 並ぶのは防災用のインスタント食品や野菜、日用品、子ども用衣類、玩具などさまざま。大型トラック1台分の物資が多くの企業・団体から寄付された。会場では「フードバンク食堂」と称し、安価での食事も提供された。

 フードバンクは月1回、同市役所で市民から不用の食品などの寄付を募り、市から要請があった生活困窮者らに無償で配布している。しかし、フードバンクの大関めぐみ理事長は「行政に声を上げられる人ばかりではない」と指摘する。

 誰でも無料で物資を受け取れる場とすることで、支援を必要とする生活困窮者のニーズを掘り起こすのが0円ショップの狙い。従来のようにひとり親世帯を対象にしたイベントとして銘打つと「子どもがいじめに遭うなど、本当に困っている人が逆に行きづらくなる」(大関理事長)からだ。

 この日、訪れた市内在住の30代女性は4歳から12歳までの1男3女を1人で育てる。子どもたちは食べ盛りで一度の食事で炊くお米は6合。食費が家計を圧迫し、玩具などは後回し。0円ショップでは食材やお菓子と一緒に子ども用の玩具も受け取った。「子どもに我慢はさせたくない。でも、どうしても全員には(玩具も)買ってあげられないのでとてもありがたい」と感謝した。

 物資を渡したり、食堂で配膳したり、東海大の1年生9人もスタッフとして奔走。同大の市川享子講師が指導する健康学部のフィールドワークの授業の一環で、市民活動の現場を学ぶ。学生にとってはこの日が初めての現場体験となった。

 韓国から留学している女子学生(22)は子どもの服選びを手伝い「感謝されて生きがいを感じた。日本でも貧困問題があるとは知らなかった」。食堂で働いた服部朝日さん(19)も「食事に困っている人がいると感じたことは今までなかった。自分も手助けができてよかった」と充実の表情を浮かべた。

 学生らは今後、フードバンクの事務所でスタッフとして勤務体験する。市川講師は「地域でどんな問題が起きているのか学生に知ってほしい。いずれ大学内にもフードバンクをつくるなど自主的な行動につながってくれれば」と期待した。

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